第25話 本屋へ
朝御飯は、ビュッフェ形式だったので、1Fのレストランで、2人と会えた。
グラーシュは、少しずつ取って、すべての料理を楽しんでいた。
アルディは、気になるものを試しにとって、気に入ったら一点集中でお腹を満たすスタイルのようだ。
気に入ったのは・・・焼きそばのような麺料理だった。
ビュッフェは、人それそれ楽しめるからいいよね~。
俺はついつい、昔を思い出して、焼き魚とみそ汁と白飯と漬物・・・。
もう戻れないから、せめてこちらで楽しめるときには楽しもうかなって感じだよね。
「ご飯食べ終わったら、支度して、ロビー集合ね。全員集合したら本日のメニューを伝えます。」
「はい。」
「御意。」
・・・
・・・・・
ロビー集合で一番遅かったのは・・・俺だった。
おかしい。
食べ終わったのが、一番早かったのは俺だったのに。
いや、無理もないのか。
グラーシュは、城内での家事手伝いで慣れているし。
アルディは、戦慣れしている。
俺なんて、便利な世の中で、便利な道具使っていたからさ。
でも・・・、この世界で生きていくのだから、早く慣れねば!
昨日、おじいさんと先生に言われた話を思い返すと、尚の事だ。
それはそれとして・・・。
「本日のメニューは、2本立てです。」
「・・・」
「まずは本屋さんを見つけて、立ち読み・・・もとい、参考になる本を買います。」
「・・・」
「次に、私立の一般ギルドを見つけたら、馬を預けてから向かいますので、先にホテルにチェックインします。」
「はい。」
「御意。」
・・・
・・・・・
出発してすぐに本屋は見つかるかと思っていた。
しかし、ニュームス、雑誌を扱っているお店は多いんだけど、ちゃんとした本を扱っている“本屋”がなかなか見当たらなかった。
やっとの思いで、見つけた本屋は、小さな体育館くらいの大きな本屋だ。
ガラス越しに中を覗き込むと、携行用飲料や食料、ローポーション、下着や肌着、小さい荷物の輸送依頼とかも一緒に扱っているのが見えた。
旅人のためにあるコンビニのような感じか。
売上の為に、色々手を出していたら、本も扱う雑貨屋のようになってしまったのだろう。
とにかく、見つかって良かった。
周囲を見渡すと、「馬預け所」の看板が見えた。
馬を預ける施設まで完備とは、マジで旅人のためのコンビニじゃん。
助かるわ。
「すいませーん、3頭お願いします。」
受付の奥から係員が、わざわざ出てきてくれた。
「はい。お時間はどのくらいでしょうか。」
「え・・・そうですね。1時間で。」
「そうしましたら、3頭で1,000Yに税金で・・・1,200Yになります。」
え、ちょ、カネ取るの?
俺が、あっけにとられている間に、速やかにグラーシュが払っていた。
「ちょっと待ってください。本を買った割引とか・・・ありますかね?」
「はぁ?・・・何を言ってるんですか?」
この返事の感じ・・・聞く耳持たずだな。
仕方ない。
「なんでもないです。」
「それでは、この木札を持って行ってください。馬にはその木札と同じマークを書かせていただきます。」
「えー?白馬に何か書くの?」
「はい。大丈夫ですよ、何度か洗えば、数日で落ちますから。」
「そんなこと言われても・・・」
どうする・・・。
アルディに思念を送る。
アルディの大きな咳払いに係員が目を向けた。
その瞬間に、3頭に光の粒子で薄いベールを被せた。
もともときれいな白馬だから、少し光っていても分からない。
3頭とも落ち着いている。
良し!
「すいません、仰る通り、目印を付けてください。」
「はい。こちらこそすいませんね。馬泥棒にやられないためにはこの方法が一番良くて・・・」
「いえいえ、大丈夫ですよ。よろしくお願いします。」
「はい、それでは預かりますね。」