第17話 建物の正体
グラーシュが興味津々だ。
大きさもさることながら、絢爛豪華そのもので、赤色と金色の装飾も細部にまで行き届いている。
このエリアの入口にあった門なんてもんじゃない。
建物の左右に伸びる通路もかなり太く、この建物を中心に、この集落のメインストリートが十字に展開している・・・。
この建物がこのエリアの中心なのか。
「なんだ・・・この建物は?」
見渡しても、看板らしき物が無い。
“当然の存在”という扱いだからか?
建物の奥に光の粒子を1つ飛ばしてみる。
赤ら顔で大髭をたくわえ人形が飾られているのが分かった。
なるほど・・・。
アルディが召喚を解いて欲しいって言う訳だ。
でも変だな。
これは、俺の前世の文化だと思うんだけどなぁ。
本当に、アルディの怒る対象なのだろうか・・・。
まず、この大髭さんの正体で、見えてくる物が変わる。
“大髭さん=関羽”で、ここが“関帝廟”だとすると、俺以外に転生者が居る、もしくは居た可能性が高いことになる。
この場合は、その転生者がどんな人か気になる。
“大髭さん≠関羽”だとすると、たまたま、関帝廟と似た建物が立っていて、関羽によく似た人を奉っているって事になる。
この場合は、この関羽によく似たこの大髭おやじの存在意義が気になる。
「グラーシュ、ちょっと寄り道になるけど、ここ、寄ってもイイ?」
「はい。」
「馬、グラーシュちょっと見てて。すぐ帰ってくるから!」
「はい。」
・・・
どこかに、あるかな~。
奥が気になって気が付かなったが、人形の前に、祭壇があった。
祭壇には、賽銭箱がいくつもあり、それぞれ1つずつ文字が書かれている。
“関帝”、“グアン ユー”、“忠義神武”、“商売繁盛”・・・
もう十分だ。
全部なんて確認しなくても、これは、関羽だ。
そりゃあ、アルディも怒り心頭するわな。
ってことは、この建物は関帝廟で・・・ここはチャイナタウンか?
この世界に中国は無いだろうから、チャイナタウンとは違うか。
いったい、誰が作ったのだろう。
○年〇月○○により建立・・・的な碑がどこかにあるはずなんだけど・・・。
・・・
しかし、いくら探しても無かった。
関帝廟の看板が無い事と合わせて考えると、このエリアにとって、当たり前の存在すぎて語る必要が無いって事かもしれない。
それか、意図的に隠して、“ずーっと前から、皆さんと共にあります”って思わせるために、あえて表現していないのかもしれない。
この関帝廟を中心に道路が走り、街並みが整っている訳だから、このエリアを作る最初からこの関帝廟があったと思われる。
わざわざ、こんな南の市街地の南の端に・・・。
金持ちが何かの意図を持って作ったか?
だとすると、関羽さん・・・都合よく悪用されてません?