第15話 ブラックはお断り
まずは、管理人棟に立ち寄った。
チェックアウトと、小包を返さなければならないからだ。
流石に、中身が食料なのに、量が気に入らないからと言って小包を放置して出てくるわけにもいかないし・・・。
「管理人さーん、おはようございまーす。」
少しすると、勢いよく管理人が出てきた。
「おはようございます。本日もよろしくお願いします。」
この人は、3日分の食料という名目のこの小包で、こちらが納得して今日も間伐作業を行うと思っているようだ。
価値観の違いは、人に言われて直せる人もたまにいるが、直らない人の方が圧倒的に多い。
仮に、この管理人が直るタイプの人だとしても、直すのに付き合うつもりはない。
付き合いたいと思えないからだ。
「いやー、申し訳ない。予定を1つ、ド忘れしてまして、急いで南の市街地に行かなきゃいけないんですよ。」
「えーっ!!そんなぁ。」
「いやいや、本当にごめんなさい。今日からの作業はちょっとできませんので、これをお返ししますし、宿泊も終わりなので、チェックアウトさせてください。」
「はぁ。困ったな。」
「すいませんね。また時間ができたら来ますんで。」
「分かりました・・・。」
・・・
・・・・・
無事にお断りもチェックアウトも済み、南の市街地に向けて出発できた。
森林公園では、色々あったが、素材集めも進んだし、闇の粒子で武器も成形できたし・・・。
「あーーっ!」
「どうしたんですか、ルラン様?」
グラーシュが心配して聞いて来た。
「あ、いや、大したことじゃないよ。」
グラーシュにとっては。
光の粒子と闇の粒子のミックスで武器を成形する方法を聞くはずだったのに。
・・・
もしかして、また、俺、はぐらかされた?
いや・・・、考えすぎか。
今夜きっちり教えてもらうとしよう。
物思いにふけっていると、市街地が見えてきた。
「あれが南の市街地かな・・・。」
「ルラン様、まずは食料の調達良いですか?」
「もちろん。」
転生してから初めての食料品の買い出しだ。
グラーシュの気の向くまま、3店舗ほど立ち寄ってみた。
グラーシュの手際よく購入していく姿は、主婦のそれに見えた。
それに、購入した物は、和食用、洋食用の食材が並び、バランスが良い。
しかし、悪く言えば、代わり映えしない。
転生したのだから、変わった物も食べてみたい。
ゲテモノは嫌だけど・・・。
「ちょっと変わった食材とか無いかな?」
「それでしたら、南のエリアに行ってみますか?」
「南のエリア?」
「さっき、買い物客が話していたのが、聞こえちゃって。」
「どんな話?」
「南のエリアは、海の向こうから来た人たち多いようで・・・、最近向こうの食材や料理が着目され始めて、おいしいって人気なんですって。」
「海の向こう・・・よし、それなら、行ってみよう!」