第12話 闇の防具
とりあえず、膝当て(ボレイン)、脛当て(グリーヴ)と鉄靴を作ってみるか。
最初の旅立ちにあたってグラーシュが見繕ってくれた装備に、これらは無かった。
もちろん、それでも良い。
きっと、動きやすさも重視してくれたのだろう。
ただ、もし、この闇の粒子で作った防具を切りつけた場合に、その接触部分を吸収することができるなら・・・。
足を切りつけた相手の武器を破壊しつつ、金属の回収もできる。
上半身を狙ってきた武器は、ダガーで破壊できるから。
上手くいくと、鉄壁が完成する。
といっても、光の粒子で防具を作って、“切り分け”を意識すれば、切り込んできた得物を切り分けることができるような・・・。
しかも、そっちの方が軽いだろうし・・・。
ただ、武器に使えるような金属を回収することができない。
戦闘中でもエコなリサイクル・・・という訳で、闇の粒子で、ボレイン、グリーヴ、サバトンを念じた。
俺の目の前に黒い球が6つ現れ、徐々に形を表してきた。
漆黒の防具が現れた。
1つずつ手に取り装着してみた。
少し重いが、全部鉄でできているよりも軽いんだから、慣れるしかない。
装着感は良い。
俺の体に合わせて作ったのだから当たり前か。
あとは試すだけ。
「アルディー!手ごろな枝で俺の防具・・・脛に打ち込んでくれるか?」
「御意。」
少し離れたところで警戒行動に当たっていたアルディが、向き直して返事をくれた。
・・・
アルディ枝を見つけたようで歩いてきた。
手に持っているのは・・・木刀?
やば、そうだった。
前回のアルディの打ち込みの恐怖が頭をよぎった。
足がすくんで動けない。
「それでは、参ります!」
え?
また躊躇なく、思いっきり打ち込んできた。
やば・・・い!
アルディは枝を振り切っている。
手に持っている枝は、かなり短くなっている。
そして、俺の後ろには、枝の先が転がっている。
俺の中に意識を向けると、吸収した部分が存在している事も確認できた。
つまり、俺の脛に当たった部分は、俺自ら吸収をした時と同様、何の感触も無く、吸収されたわけだ。
特に吸収を意識したわけではない。
防具としての性能上、自動で吸収の機能が起動したのだろう。
こんなにヒヤヒヤするなら、外して試せばよかったって考えが頭をよぎったが、実戦に近い経験が実戦に生きるんだから、これもいい経験か。
「アルディ、ありがとう。悪いけど、警戒に戻ってくれるかな。」
「御意。」
「凄い防具ですね。」
グラーシュが感心してくれた。
「そうだね。」
「いっそ全身その黒い防具にしたら、いかがですか?」
「それは止めておくよ。」
「どうしてですか?」
「・・・」
「ん?」
「それはね、今使っている防具が気に入っているからだよ。」
グラーシュは、驚き、喜んでくれた。
「さて、今日の作業は終わり!帰ろう!」
「はい!」