第11話 光の刃と闇の刃
「俺が思うに、闇のダガーは切っていない・・・多分。」
「切っていない?」
「そう、刃の当たっているところを吸収しているんだ。多分。だから、この木材は、ダガーの刃の厚みだけ短くなっているはず。」
試しに闇のダガーで切った木材の先に、ダガーを軽く当てて長さを見た。
他の2本と同じくらいの長さになった。
「ビンゴ!」
グラーシュは、ピンと来ていない様子だ。
まぁ、いいか。そのうち、“ルラン様は何でも切れる2本目のダガーを手に入れた。その2本目は黒い”って理解で落ち着くんだろう。
あながち間違いじゃないし、グラーシュが困ることは無いから、ひとまずそれでいいか。
同じ事象でも、人によって把握することや理解することは違うし、それによって困る事が無いなら、別に俺の思っている事を押し付ける必要もない。
むしろ、それが個性!
それはそれとして、この2本、どちらも“切断”という一点は、同じなんだよな~。
その結果に至る過程が違うだけ。
光のダガーが切り分けているのに対し、闇のダガーは刃の当たった場所を吸収している。
この違いは、何に使えるんだろう・・・。
スキルは最強らしいけど、使い手の俺が2ビット脳で困る。
さて、他の部分、特に刃渡りで囲まれた“腹”を使った場合も吸収になるのかな?
切株がかわいそうになってくるが、試させてもらった。
何も考えずに叩きつけると、吸収することも無く、ダガーが切株に跳ね返された。
吸収を念じて叩きつけると、ダガーの軌跡の部分が吸収出来た。
凄いな。
気になって光のダガーの腹で切株を叩いてみた。
何も考えずに叩きつけた場合の結果は、闇のダガーと同じく切株に跳ね返された。
切り分けを意識してみると・・・切り分けることができた。
どうなってるんだ?
全く理解ができないが、切り口は真っすぐで、合わせると一致する。
ダガーの幅は5cm以上もあるというのに・・・どういうことだ・・・。
こうなると、光のダガーは切り分けることを意識して振り回すだけでよいという事になる。
同様に、闇のダガーも吸収することを意識して振り回せば良いという事になる。
ただ、剣の達人にこのような“腹”の使い方を見られたら、怪しまれることはこの上ない。
“腹”の利用は、一旦保留し、丁寧に刃渡りが当たるように振る事としよう。
刃物は刃物として使う、道具には正しい使い方があるって事か。
・・・
んー。
この2本は異なる性質を持っているから、別々に持つ必要があるのは分かるんだけど。
既に俺の体自体が、光の粒子と闇の粒子の両方で構成されている。
同様に、両方の粒子を用いて1本にまとめれないかな・・・。
・・・
光の粒子と闇の粒子の両方を使って成形するってのは、おじいさんからも先生からも聞いて聞いてない。
何かの間違いで、周囲が爆発して吹き飛ぶのは、全然洒落にならない。
マジで、俺の想像を超えた事が起きかねない・・・。
闇の粒子が関連している以上、試さない方が良いだろう。
ニコイチは、おじいさんと先生の指導を受けてからってことにして、闇の粒子で防具を生成してみるか。