第10話 闇で成形
闇の粒子で作るのは、“ダガー”だ。
既に俺が脇に差しているダガーが不満という訳じゃない。
成形後に比較をするためというのと、試したことのない物は、まず自分で試すもんだと思ったからだ。
まずは、既に自分の中にストックされている木材から、闇の粒子と副産物として生まれるエネルギーの回収をイメージする。
用いる闇の粒子は、光の粒子でダガーを作った時のように、中空構造で成形してみよう。
比較のためにも、今腰についているダガーと全く同じサイズをイメージした。
俺の手のひらに黒い球が現れた。
そして、徐々にダガーの形に変化していく。
先生の言う通り、何の苦労もなく、念じるだけで、闇の粒子のダガーは出来た。
ただ、光の粒子で出来たダガーに比べるとずいぶん重い。
考えたとおり、中空構造で出来上がっている筈なのに。
さて、光の粒子のダガーは、光の粒子を加減することで伸び縮みができるが、闇のダガーは・・・。
同様にできた。
切れ味は?
回収後に残っている切株を利用して試し切りをしてみた。
どちらもよく切れる。
強いて言うなら、闇の粒子の方が切れる?
重さがあるから、振った時の勢いが付いているのかな?
2本を置いて、枝を手に持ち、枝を刃に当てて見た。
どちらもよく切れる・・・重さは関係ないみたいだ。
だとすると・・・どういうことだ?
切り口を比較してみた。
光のダガーによる切り口も、闇のダガーによる切り口も、たいして違いはない。
全く違いがわからない。
「困ったなぁ。」
「何を困ってらっしゃるんですか?」
帰り支度を済ませたグラーシュが戻ってきた。
両手で沢山の山菜を抱えている。
「ん?もしかして、保存食がそろそろ切れる?」
「はい・・・。」
「それも困ったな。」
「大丈夫です。やりくりしますから。」
「それはありがたい。」
でも、グラーシュのやりくりも限界がある。
今日が作業最終日かな。
明日には南の市街地に入るとしよう。
グラーシュが闇の粒子製のダガーを覗き込んできた。
「真っ黒ですね。何がどうなってるのか、ぱっと見、分からないくらい・・・。」
ん・・・そうか!!
ゲートを開いて同じサイズの木材を3本出してみた。
1本目は、そのまま地面に置いた。
2本目は、光のダガーを使って、真ん中で切ってみる。
切り口を合せて、1本目の隣に置いた。
3本目は、闇のダガーで、同じように切って、並べておいた。
「やっぱり!」
「何かわかったんですか?」
グラーシュも3本を見比べ始めた。
「ふふふ、分かる?3本の長さだよ。」
「長さ?・・・あ!これだけ短い!」
グラーシュは、闇のダガーで切った物を指差した。
「という事は・・・どういうことですか?」
グラーシュはまだ分かっていない様子だ。
無理もないか。