第8話 間伐の裏話
間伐作業をこなしているうちに、あっという間に1日が終わった。
縄が結ばれている間伐対象のうち、ノームが住み着いている物は放置し、ノームの居ない物を選んで伐採したから、思ったほど伐採本数は伸びなかった。
管理人は良かれと思って間伐対象を選んでいるのだろうけど・・・。
それは人間の都合で、精霊の思いとはかけ離れてしまっているってよくわかった。
何が良いかってのは相対的な話で、どの答えが正しいかって判断は難しいもんだね~。
今回は、不十分な管理をしている管理人の思惑よりも、生活をしているノームの思いを優先したけど・・・。
これが本当に正しい判断かは分からないわけで・・・。
「とにかく、本日の作業はここで終わり!帰るよ~。」
「はい。」
「御意。」
しっかし、ずいぶん集まったぞ。
何t分の木材がストックできているか・・・分からないくらいある。
この一部を闇の粒子に変えて、副産物のエネルギーを回収し、武将、戦馬を召喚して、武具、馬具を成形することになる。
それだとしても、使うのは、多くても木材1t分くらいじゃないかな。
いつでも木材を闇の粒子に変換できることを考えると、大量の闇の粒子がストックされてるようなもんだ。
おじいさんの事を気にする訳じゃないけど、光の粒子のストックが闇の粒子に比べると圧倒的に少ない。
なんかバランスが崩れていると不安になるわ。
明日は木材の回収の際に周囲の光の粒子も回収しよう。
宿泊先のログハウスに戻りながら、管理人棟に寄って一日の作業を報告した。
もちろん、敢えて切らなかった木とその理由を伝えた。
勝手なことして!ふざけるな!って怒られるかと思ったが、そうではなかった。
「間伐作業お疲れさまでした。ありがとうございました。」
ねぎらいの言葉と感謝の言葉が返ってきた。
「いやー、お恥ずかしい話なんですが、どの木を切るのが良いか、正直なところ、私には分からないですよね。」
「え?」
「ノームに好かれている木を伐採すると、恨みを買ってしまい、取り付かれて大変な目に遭うと聞いています。」
先日、ノームに取り付かれた人間を見た俺としては、それはよくわかる。
「実は、前任者も、ノームに取り付かれて、おかしくなってしまったんですよ。」
「・・・」
「私がそれを知ったのは、管理人になってからですが・・・。そんなこと知ってたら、管理人になんてなってないですよ。」
「・・・」
「ただ、管理人になってしまった手前、間伐を全くやってないと指摘されてクビにされても困りますし・・・」
「ひとまず、縄を縛り付けて、枯れたら伐採してました。」
返事のしようもないような話をペラペラと・・・まったく、とんでもない管理人だな。
それでも、自分ことは可愛いし・・・この人なりに工夫した結果なのか・・・。
まぁ、俺としては、木材を集めれるし、良しとするか。
「そうでしたか。色々と大変ですね。」
「いや~、ホント、助かります。」
「明日も有りますので、私たちはこの辺で失礼します。」
・・・
一日中スキルを使い続けたグラーシュはバテバテ。
俺も最後の管理人との会話のせいで、なんだか気疲れしてしまった。
元気なのはアルディだけだった。
アルディには馬の世話を依頼して、夕飯も食べずにベッドに倒れ込んだ。