第3話 夜のお手伝い
目を覚ますと、視界が揺れている。
グラーシュが俺をゆすって起こそうとしていたようだ。
「どうしたの?」
「読み始めたのですが、この文章のほとんどが私の魂に書き込む内容だったんです。」
「うん?魂に書き込む?」
「はい。読み込む部分に、“直立し、胸にこの本を立てて差しこむ”とあります。」
「そうなんだ。」
「この図を見て下さい。細かいやり方も書かれてますので合わせて読んでください。」
グラーシュが開いたままの本を預けてきた。
えーっと、なになに~?
言われるがまま、本を覗き込むと、御丁寧に、本を差しこむイメージ図と解説があった。
どうやら2人でやるようだ。
スキルを習得する者は、直立し、本を押し当てられる胸を露出し、入ってくる“魂への書き込み”に集中する。
もう一人は、この本の背を持って、“小口”を露出した胸に押し当てるようだ。
なるほどね~。
本タイプでスキルを習得する場合ってこうやるんだ~。
バッ!
音がする方に目を向けると、シーツを脱ぎ捨て、バスタオル一枚で、胸元を大きく開けたグラーシュが立っていた。
「ちょ!!今!?」
「はい!」
グラーシュの目はマジだ。
俺がスキルの習得に集中する必要は無さそうだから、このまま行っても大丈夫そうだけどさ。
ヤバい・・・。
再び鼓動が大きくなって、頭にまで響いて・・・不整脈になりそうだ。
でもやらなきゃ終わらない。
このままで居たら、脈がおかしくなりそうだ。
「分かったよ。やるか。」
「はい!お願いします。」
そう言うと、グラーシュは目を閉じた。
・・・
大きな鼓動だけが頭の中で響くことも忘れ、つい見とれてしまった。
どこかの絵画にありそうな・・・絵になるなぁ。
じゃない。
早くせねば。
「じゃあ、挿れるよ。」
「はい・・・。」
挿れるとか・・・余計なことをイメージするな!
違うんだ!
これは違うんだ!
違うんだけど、ヤバい!!
卒倒しそうだけど、ここは踏ん張りどころだ!
頑張れ、俺!
グラーシュの胸に本を押し当てた。
その瞬間、本が光り始めた。
柔らかい感触が本を通して伝わってくる。
「う・・・。」
グラーシュが漏らす声が色っぽい・・・。
少しずつ、勝手に入っていく。
それに合わせて悶えるグラーシュ・・・
見ているこっちが、やばい。
早く終わって欲しいと、つい力が入ってしまいそうになるが、押し込んだら“魂への書き込み”に差し障りがありそうだ。
流れに任せて、本が入り切ったところで、グラーシュは膝から崩れ、俺は慌てて受け止めた。
「グラーシュ!大丈夫か?」
「・・・」
何の反応も無い。
グラーシュは完全に意識を失ってしまったようだ。
ベッドに寝かさなきゃなんだけど、・・・シンプルに重い。
見た目で重そうなのは、胸だけで、華奢な体つきなのに・・・。
あ、そうか。
グラーシュの見た目の美しさから、つい忘れがちだけど、グラーシュは、格闘術中心のパワー系女子で筋肉質だからか。
それに加えて、完全に脱力してしまっているから重い。
前世で何度も酔っぱらいを介抱するために持たされたことを思い出した。
酔っぱらったおっさんを持つことに比べれば、こんなに幸せな介抱も無いな。
なんとかベッドにグラーシュを寝かせた。
ふぅ。
これで目が覚めたら“鑑定眼”を無事に習得してくれているといいのだけど。
ん?
俺はどこで寝るの?