第1話 南回り始め
王都シーデリアは、東の市街地から、中央市街地へは直線的に進めず、北の市街地もしくは南の市街地を経由する必要がある。
地図を見る限り、陸は続いているから物理的には行けるようだけど、何故か中央市街地と東の市街地は、中央からの一方通行と決まっているらしい。
この一方通行を徹底する為に、通過する箇所が限定されていて、関所が用意されている。
それ以外のところは徹底的に壁が設置されている。
ここまで徹底されていると、何か訳があると勘ぐってしまう。
ともあれ、行けないんだから仕方ない。
直感で、南の市街地回りで行く事にして、東の市街地を後にした。
東の市街地から南の市街地までは、馬を飛ばしに飛ばせば、その日のうちに入れる。
しかし、市街地中心でも、魔物みたいなのが生まれることを考えると、いざという時に全力疾走できるくらいの余力を残しておく必要がある・・・。
という訳で、本日は東の市街地と南の市街地の間の地点で宿泊となった。
ここは、王都内だけど自然豊かな森林公園だ。
今夜、グラーシュが見繕ってくれた宿泊先は・・・コテージだ!
しかも、ログハウス。
丁度、俺がこの世界に転生したときに居たログハウスと同じくらいの大きさだ。
森林公園内のログハウスだから雰囲気は非常に似ている。
ただ、あの時は管理人が居たから、夕飯の準備などの手間が省けたが、今夜は違う。
自分たちで全てやらなければならない。
火起こしは、俺の仕事になった。
もう、きりもみ方式で、時間をかけて火起こしする必要はない。
自分の中にストックされているエネルギーを、窯に入れた薪に向けて、付加して点火するだけだからだ。
しかもこのコテージには、俺とグラーシュとアルディしかいないから、人目を気にせずスキルを使える。
サクッと火を付けたら、料理とお風呂の準備はグラーシュに、馬の世話をアルディに任せ、俺は地図とにらめっこ。
地図を見る限り、ここから南の市街地、そして中央市街地までの道中は、森林地帯が見当たらない。
つまり、木材のストックを得るのは、今いる森林公園がチャンスという事になる。
この森林公園の管理人に、要らない材木を分けて貰おうかな~。
アルディにも手伝ってもらうとして・・・。
いっそ、明日はオフって事にして、自分で色々を決断することに前向きになったグラーシュに自由時間を与えるかな~。
アレも有るし・・・。
・・・
「御飯できました~」
・・・
幸せなことだよね~。
ご飯を作ってくれる人が居るって・・・
独身35歳で仕事を終えてアパートに戻って、自分で冷凍食品をチンして独りで食べながら、毎日パワハラに遭う日々に比べると、なんて幸せなんだ。
なんか変な拘りが始まって、良い食材を使って作ってみたり、珍しい調味料を使ってみたり、便利な調理器具を買ってた時期もあった。
でもさ、食べ終わった後に切ないんだよね・・・。
そのうち、自分で稼いだ金で、好きな物を食べて、美味いって思えた後に、“なんで切なさに襲われにゃならんのだ!”ってなるんだわ。
それに比べたら、こうして作ってくれる人が居て、一緒に同じものを食べてくれる人が居るってのは、どんなに幸せな事か・・・。
「どうかしましたか?味が変でした?」
作ってもらったご飯を食べながら、つい感慨深くなっていたら、グラーシュに心配されてしまった。
「大丈夫だよ。いつもどおり美味しい!」
そう言った俺に、グラーシュは素敵な笑顔を返してくれた。
危うく卒倒しそうになった。
ついつい、誤魔化す様に、残っていたご飯を急いで食べてしまう。
「お風呂も準備できていますので・・・。」
幸せなことだよね~。
お風呂を沸かしておいてくれる人が居るって・・・。
そんなことを思いながら、自分の食器を片付けて、お風呂に向かった。
お陰様で、100話到達です。
日頃お読みくださるみなさんのおかげです。
引き続き頑張りまーす(^0^)