第29話 スキル本の購入
「今日は・・・」
グラーシュの目力が凄い。
大丈夫、分かってるから。
「昨日の万屋に行って、“鑑定眼”を買います。次いで、この世界に関する本も買いたい・・・んだけど。」
「・・・」
「最近は、カネばっかり使ってて凹むな~。」
「大丈夫です!」
そういって、グラーシュが持ってきた袋は、見た目以上にずっしり重く、中は黄金色に輝いていた。
「めっっちゃ、あるじゃん!」
「はい!」
・・・
じゃない!
減る一方ってことが問題なのよ。
グラーシュなりに、励ましてくれたんだろうな。ありがとう。
「万屋の後は、中心部行くよ。道すがらギルドがあったら立ち寄るね。」
「はい。」
「それでは、シュッパーツ!」
・・・
・・・・・
無事に万屋に到着した。
アルディに馬の番を頼み、グラーシュを連れて店内に入り、“鑑定眼”のスキル本の前に来た。
「すいませーん。」
店員さんを呼ぶと、運良く昨日接客してくれた店員さんが来た。
「一週間と言わずに、すぐに買いに来てしまいました。」
「ありがとうございます~。」
こんな高額商品が、そう簡単に購入されてしまうとは思わなかったけど・・・。
せっかくグラーシュが自ら考えて、欲しいとはっきり意思表示した物だから、“善は急げ”かな。
無事に滞りなく“鑑定眼”の購入が済んでよかった。
高額商品につき、俺が受け取り、ローブの下に隠した。
そのままゲートに収納した。
さて、2つ目の目標物を店員さんに聞いてみるか。
「すいません、シーデリアの歴史や社会構造の分かるの本ってありますか?」
「お客様、申し訳ございません。その手の類の本は、当店で扱っていません。」
「そうですか。見たところ書籍もあるから、てっきりあるものと思ってしまいました。」
「当店で取り扱っているのは、魔法、スキル、技術関連の書籍・巻物と、あとは武具関連の書籍のみですね。」
「そうでしたか・・・。そしたら、歴史や社会の本の扱いがあるお店を教えてもらえますか?」
「この辺に、そういう類の本の取り扱うお店は少ないです。」
「え?」
「本屋はそれなりに有るのですが、何処も娯楽系の本や、マジックスクロールの取り扱いが多くて・・・。」
「売れないから?」
「そうですね。」
「困ったなぁ。」
「強いて言うなら・・・王都中央市街地の方があるかもしれません。」
「中央か・・・これから行く予定なので、良かったです。」
「ただ、それならばいっそ、都立図書館か王立図書館に行った方が、購入するより安上がりで良いかもしれませんね。」
「この東の市街地に図書館は無いんですか?」
「ありますけど、本屋とほぼ同じで、歴史や地理の本は少ないと思います。」
「分かりました。」
万屋を後にして、王都中心を目指し、出発した。