第27話 精霊の憑依
「このおじさんは土の精霊に取り付かれて、襲ってきたって事ですか?」
意味が分からないけど、まとめるとそういうことだよね?
「そうですね。ほら!」
青年の見せてくれた球に、ちっちゃいおっさん?の様なものが捕らえられていた。
「これが・・・土の精霊?」
そう言うと、ちっちゃいおっさんに睨まれた・・・ような気がした。
土の精霊、怖っ。
「そうです。いわゆる“ノーム”ですね。」
は?
このちっちゃいおっさんがノーム?
これにとりつかれると我を失って人を襲うの?
やば。
この世界の知識が、マジで早急に必要だ。
今日は“鑑定眼”の購入と同時に、この世界の基本知識が詰まった本をゲットするか。
「ちょっと教えて下さい。そのノームに取り付かれると、おかしくなるもんなんですか?」
「え?・・・もしかして何も知らないんですか?」
「あ・・・すいません。」
「はぁ。仕方ないですね。仕事も有るので、簡単な説明で失礼しますよ。」
「はい、お願いします。」
「まず、このおじさんにどんなことがあったのか分かりませんが、精神力が低下していたのでしょう。」
「・・・」
仕事で嫌なことがあって、メンタルがボロボロだったとかかな・・・。
「そこに、この悪いノームが忍び寄り、おじさんに取り付いた。内部でノームを制し、排除することができず、この悪いノームに好き放題されてしまった・・・ってところですかね。」
自分を強く持って誘惑に負けない・・・。
負けて流されると命取りになる・・・。
現代の日本と変わらないな。
ん?
「悪いノーム?」
「ノームがみんな悪い存在という訳ではありません。人間に協力的なノームも居れば、このノームのように悪い影響を与えるのも居るという事です。」
「他の精霊も同様ですか?」
「そうですね。」
人間も色々いるけど、精霊も色々いるって事か。
グラーシュの自分の目で見極めるって意欲は、俺にも必要だな。
“鑑定眼”は習得できそうにないけど・・・。
・・・
それにしても、発見即射殺ってのは、なかなか過激だな。
「悪い精霊に取り付かれたら、発見後即射殺って決まってるんですか?」
「まさか。基本的には、捕縛して、精霊を取り除く、つまり“除霊”という流れになります。」
「そうなんですね。」
「ただ、今回は、発見時に、丸腰の民間人に、既に完全に我を失った状態で襲い掛かっている現場で、自分が捕縛するには困難なほど距離があるという状況から、やむを得ず、射撃しました。」
「1射目で、我に返る事も無かったし、制止することができなかったことから、2射目で射殺を試みました。」
「なるほど・・・。」
なんか、警察みたいな話し方だな・・・。
「警察の方ですか?」
「え?本当に何も知らないんですね。」
「すみません、不勉強で・・・」
「私は、特別対魔警備部所属のティオレスと申します。」
「特別対魔警備部?」
「あ・・・、警察です。」
「何から何まで知らないで、すいません。」
「いえいえ。今後は丸腰ではなく、最低でも護身の範囲の武器の携帯をして、自分の身は自分で守ってください。」
「はい・・・。失礼します。」
「ちょっと待ってください。」
「え?」