第26話 気分転換のはずが
ムニッ!
おじいさんを呼び止めようと手を伸ばしたらつもりが、不意に襲われた柔らかい感触に目が覚めてしまった。
で、この状況は・・・どういうことだ?
寝ている俺に馬乗りになりかけているグラーシュ・・・。
俺の右手はグラーシュの胸・・・。
慌てて手を引っ込めるが、状況が全く分からない。
「えーっと、ごめん。夢で・・・。」
「大丈夫です。」
・・・
ん?・・・大丈夫とは?
じゃない!
そっち方向で考えるとややこしくなる!
「どうしたの?」
「ルラン様が、掛布団を退かして寝ていたようなので、掛けようとして・・・。」
グラーシュが手を伸ばそうとしてた先に目を向けると、俺の掛布団が丸まっていた。
「あぁ、ごめん。」
「いえいえ。」
窓に目を向けると、まだ薄暗かった。
これは、至福の“二度寝”・・・と行きたいところだけど、いや~、弱ったな。
まだおじいさんに教えてもらいたいことが思い付かない。
このまま二度寝してあの空間に行っても、またおじいさんを怒らせちゃう・・・。
まさか、二度寝がこんな形で阻止されるなんて思いもしなかったわ。
闇の粒子で召喚を試す前に、おじいさんに教えてもらう事が先決だろうな~。
・・・
ただ、あんまり召喚を先延ばしていると、先生も臍曲げるかもしれないよな~。
板挟みだ・・・。
このまま部屋に居ても、アイデアは浮かびそうにない。
「ちょっと散歩してくるね。」
「はーい。いってらっしゃーい。」
・・・
・・・・・
薄暗い中を散歩した。
公園らしき場所に差し掛かった時に、ベンチで寝入っているおっさんがいた。
興味本位で近づくと、案の定、酒臭い。
昨日飲み過ぎて、動けなくなって寝てるのか?
絡まれるのも嫌だけど、心配だ。
「もしもーし、大丈夫ですか?」
むくっと、おっさんは起きた。
「こんなところで寝てると風邪ひきますよ。」
テンプレートの様な言葉をかけて見たが、反応がない。
それどころか、よだれ垂らしてるし、顔色も青みがかってるし・・・何?
酔っぱらいに絡まれるなんて話じゃない。
・・・おっさんの様子が明らかにおかしい。
様子を伺いながら、音を立てないようにゆっくり離れて距離を作る・・・。
「ガーッ!」
突然、声を上げて、襲ってきた。
すかさず右手を背中に回すも、ハンドガンを持ってきていない。
やば、俺、丸腰じゃん。
王都で、か○は○波や霊○は使えない。
逃げるしかなーい!
宿泊先のホテルに向けて全力疾走・・・。
と思ったら、おっさんの肩に矢が刺さった。
え?
どこから放たれた?
刺さった矢の角度から、矢の出元を見ると、ひとりの青年が弓を持っていた。
助かった~・・・。
と思ったら、第二射を準備している。
射線の邪魔にならないように、ってか、俺が射殺されないように、身を引く。
次の瞬間、放たれた矢は、おっさんの頭に命中し、事は済んだ。
・・・
「助かりました。ありがとうございました~。」
「無事でよかったです。」
そう言いながら、おっさんに近づき、何か作業をしている。
「酔っぱらい・・・じゃないですよね?」
「酔っぱらい?違いますよ!」
「すいません、初めてのことでよくわからないんです。ちょっと教えてもらえますか。」
「え!?・・・まぁ、実際に遭遇するのは稀なことだから、初めてなら無理もないか・・・。」
「すいません。」
「このおじさん、精霊にとりつかれたんですよ。多分、土属性の精霊でしょうね。」
は?
精霊にとりつかれた?
何を話しているんだ?