第23話 属性鑑定眼の謎
「儂の言った通り、“空”のままじゃったろう?」
気が付くと、いつもの白黒の世界で、目の前に笑みを浮かべるおじいさんが居た。
「そうですね。本当はもう“空”じゃないのに。」
「そうね。もう“空”ではないわ。」
先生も近くに居た。
「へぼいんじゃ!!」
は?
「その球っころが、シンプルにへぼいんじゃ!」
「そうね、へぼいわ。」
「ちょっと待ってください。どういうことですか?」
「今、この世界は自分たちの分かっている“火・水・風・土・光・闇”で、属性鑑定球を作り、それが普及して、当たり前のように使われているわけ。」
「そうなんですね。」
「そうなの。その状況が、とっても便利だとして、後に“他の属性が見つかりました!”ってなったら、あなたならどう思う?」
「それを含めて、新しくしなきゃ!・・・ですかね。」
「もしその“新しくしなきゃ”が、結構面倒くさいとすると?」
「ん?」
「そうね~、例えば、属性鑑定球を作った人がもう死んじゃっていて、技術の承継もできてなくて、開発技術者が居ないって話だったら?」
「んー、その不十分な性能の属性鑑定球の使用を続けてしまうかもしれません。」
「もしかすると、新しい属性鑑定球を技術的には作れるんだけど、今まで売ってきた人が凄い強引に「このままでいい!」って押し通しているってこともあるかもしれないわ。」
「とにかく、へぼいんじゃ。自分たちに都合のいい物を作りおって。たいそうな“属性鑑定球”なんて名前を付けるなら、きちんと作れ。」
「まぁまぁ、抑えて抑えて。」
「いいじゃない。自分が“空”じゃないって分かっていれば。他人からどんな判定されようとも、その自分の力で結果を出していけばいいんだし。」
「確かに。」
「人は人の中で生きていてると同時に、自分を持って生きているわ。」
「・・・」
「そのバランスのためには、“他人に理解される”ことは重要。」
「・・・」
「自分がいくら優れていても、他人の理解できるように見せないと、理解は得られない。そして、理解を得られないで人の中で生きていく事は精神的に大変よ。」
「はい。」
「理解されないよりは、理解されるようにアレンジして、理解された方がいいでしょ?」
「そうですね。」
「要するに、あなたは“空”じゃないけど、そのままでは理解されないから、理解されるようにカムフラージュしなさいってこと!」
「分かりました。」
「ところで、ポーションの確認・・・見てました。」
「えぇ。」
「自分でつけた傷が、ポーションを使わなくても、治りました。」
「良かったじゃない。」
「・・・」
「良くなかったの?」
「いえ、治って良かったです。」
・・・
これは・・・。
また何かはぐらかそうとしてるな。