第22話 鑑定眼が欲しい訳
グラーシュが、“鑑定眼“少しずつ語ってくれた。
「ルラン様も御存じの通り、私は小さい時から家族も家も無く、他人に振り回されてきました。」
「言われたこと場所に住み、行い、学びました。」
「自分で見て考えて行動しなかった私が行き着いた先は、親ラゴイル派、偽ラゴイル派、反ラゴイル派に巻き込まれて・・・」
「振り回されて、住み慣れた城とのお別れでした。」
「ルラン様に、自分で決めていいよと言われたときに、気が付きました、“自分で”っていうことの大切さに。」
「もちろん、レーゼン侯爵城に戻る事も考えました。」
「でも、レーゼン侯爵城は、振り回され続けた私の居場所であって、“自分で”作った場所じゃないって思ったんです。」
「そして、“自分で”ってことに、気づかせてくれたルラン様に、自分で付いていく事にしました。」
そう考えて付いてきてくれたんだ・・・。
だから、ちょっと変な俺にも目を瞑ってくれてるのかな。
「行動するためには、周りの状況を知る必要があって、ルラン様は、どうやってるかわかりませんが、周囲の情報を収集していますよね?」
「うん。」
「でも、見つけた人や魔物の事は把握できていない様子でした。」
この子・・・マジか、かなり、察しが良いぞ。
「私も役に立ちたいので、私がこのスキルを習得してお役に立ちたいと思って・・・」
「なるほど。」
「それと・・・」
「それと?」
「私にはルラン様が“空”というのが納得できなくて・・・。」
「自分の目で、ルラン様のやっていることを見ています。」
「残念ながら、やっている事がどういうことなのかよくわかりませんが・・・。」
「でも、自分の目でちゃんと“鑑定”したいって思って。」
・・・
そういうことだったのか。
「なるほどね。」
「はい。」
「では、それを踏まえて、もう一つ質問良いかな?」
「はい!」
なんだか、言いたいことを言い切って、理解してもらえた実感を得たグラーシュは、すっきりした様子で、気持ちの良い返事を返してくれた。
「さっきの属性鑑定球で、グラーシュは“土”属性を持ってることが分かったよね。」
「はい。」
「という事は、今“鑑定眼”を習得した場合に、“土”属性に関連する魔法やスキルや技術を鑑定できるわけだ。」
「・・・」
あれ、グラーシュ、元気なくなってきた?
俺の言おうとしてることを察したのかな。
「逆に、今のままでは、それ以外の属性は鑑定ができない。」
「・・・」
「ただし、これからグラーシュが他の属性も持てば、鑑定眼のスキルで鑑定できる物は増えるよね?」
「はい!」
おぉ、元気戻った。
良かった。
「どうすれば、他の属性を持てるようになるかは分からないけど、グラーシュは“鑑定眼”を習得した後、他の属性を持つように頑張る?」
「はい!」
「分かった。それなら、明日、グラーシュのために、鑑定眼を買おう!」
「ありがとうございます!」
「それに、自分の持っていない属性を得るためにどんなことが必要なのかは、“空”の俺も興味があるところだから、一緒に挑戦しよう。」
「はい。」
多分、俺には無理なんだろうけど、ダメでもともと、やってみなきゃ分からないこともある!
「明日は、開店殴り込みだ!夜更かしせんと、早く寝るぞー!」