第17話 気になるのは
グラーシュがこちらを向いた。
が、黙っている。
「ん?どうしたの?」
「・・・」
「どれ見てたの?」
グラーシュが指さした先にあったのは、銀の縁取りがあるハードカバーの書籍だった。
レアスキルか。
【軍】のタグは付いていなかった。
タイトルは、・・・“鑑定眼”?
「これ・・・え!・・・ご・・・500G!?」
ぶっ飛んでんなー。
金貨50枚!
税込み・・・500Gと1,000,000Y!!
まともにショーケースを見てなかったから、今気が付いたけど、ショーケースの中は、どれもビックリするような金額の物ばかりだった。
「えーっと、グラーシュ・・・額が額なので、まず財布の中身を、教えて欲しいな。この金額は・・・有る?」
「はい。」
あるんかーい!
「良し。そしたら、俺はこの“鑑定眼”がどんなスキルか分からないから、ちょっと教えて欲しいんだけど、良い?」
「多分、見た相手の魔法やスキルなどが分かるスキルだと思います。」
「そうか・・・。」
多分か。
「・・・」
「グラーシュ、わりぃけど、ちょっと気になることがあるからさ、店員さんから話を聞いてみたいな。」
グラーシュが周りを見渡し、店員を見つけ、呼びに行った。
・・・
グラーシュが店員を連れて来た。
「お客様、どうなさいました?」
「すいませんね、この“鑑定眼”について教えてもらいたいことがありまして。」
「はい。」
「これは、どんなことが鑑定できるんですか?」
「はい、使用することで、対象1人のコモンとレアのスキルと魔法と技術などが鑑定できます。」
やば。
そりゃこの値段になるわけだわ。
「このスキルの習得は、・・・ただ、この本を読めばいいんですか?」
「すみません・・・。私は読んだ事が無いので、はっきりは申し上げれません。どうしたらいいかは、この本の中に書かれている筈です。」
ん?
もしかして、読み進めたら、読破以外に習得のために必要なことが書かれているってケースもあるのか・・・
「分かりました。次に、このスキルの習得の条件はありますか。」
「確か・・・、何かの属性を持っていれば習得は出来るはずです。」
「ん?」
「自分が持っている属性に関連するものだけ、鑑定できるはずです。」
なるほど。
仮に、グラーシュが火属性を持っていると、火属性関連の魔法、スキル、技術の鑑定ができるという事か。
全ての属性を持っている人間は、この鑑定眼を持つと、コモンとレアのすべての鑑定ができる訳だ。
仮に、グラーシュがこの鑑定眼を習得した場合に、そのスキルを最大限発揮するためには、グラーシュが全属性を持つことが必要・・・。
「いや~、すいません、あと3つ質問させてください。」
「3つと言わずに、いくらでもどうぞ。」
「ありがとうございます。このスキルは、よく売れますか?」
「お恥ずかしい話ですが、そんなに売れないですよ。王都の外れだからですかね~。」
「そうですか。在庫は有ります?」
「この1冊だけですよ。」
「そうでしたか・・・。で、このスキルの【軍】あります?」
「うちは在庫を持ってませんが、確かあるはずです。値段は・・・この本とは桁が違いますよ。」
「ありがとうございました。とっても勉強になりました。」
「いえいえ。もしよろしければ、お取り置きしましょうか?」
「お取り置きされても、買わないかもしれませんよ?」
「大丈夫ですよ、そう売れる本でもありませんし・・・。」
だったら、取置く必要ないじゃん!
そう思ったが、グラーシュの事が気になる・・・。
「取り置き期間は、どのくらいですか?」
「今日から3日後まででいかがですか?」
「それなら、お願いしようかな。いいですか?」
「喜んで、対応させていただきます。」
「グラーシュ!」
「はい。」
「今日のところは、これで帰ろう。」
「・・・・はい。」
王都での初めての買いものを終えて、外で待つアルディと合流した。