第13話 輩対策の不備
「なんだなんだ、この2頭、めんどくさそうだなぁ。その静かな奴でいいや。幾らだい?1,000Yでいいかい!」
そういいながらエラムに1人の男が近づいた。
それを見るや否や、ストークが頭突きで、男を追い払う。
「なんだこの馬、自分が家畜ってわかってねぇようだなぁ。」
そういいながら、ストークの後ろから近づく俺よりもマヌケな男。
ヤバい、こんな威勢だけいい奴、ストークの馬蹴りで吹き飛ばされるぞ。
次の瞬間、ストークの尻が上に持ち上がって・・・。
バシッ!!
凄い音が響いた。
マヌケな男は立っている。
その後ろにアルディの姿。
男の後ろからアルディがストークの足を片手で受け止めた音だった。
「俺の馬に何か用か!」
アルディが5人に凄んだ。
萎縮する男達。
それと、ストーク。
そうか、ストークはアルディとプロレスごっこして、アルディの凄さをよく分かってるんだったね。
「何か用かと聞いている!」
「ひー、す、すいませんでしたー。」
5人とも脱兎のごとく逃げて行った。
「アルディ、助かったよ。」
「遅くなって申し訳ございませんでした。」
「そんなことは良いよ。」
嘘です。
全然、良くなかったわ。
俺の攻撃って、相手を麻痺させるとかじゃないから、こういうケースで穏便に立ち回れない事がよく分かった。
もう1人くらい召喚しないといけないかもな~。
それと、先に宿泊先を探して、馬を預けるべきだった。
反省反省。
会計を済ませていたのか、グラーシュが遅れてやってきた。
「で、良い武器は見つかった?」
「それが・・・見つかりませんでした。」
「うーん、それは残念だったね。」
まぁ、アルディもグラーシュも手ぶらだから、そんなことじゃないかと思ったんだけどさ。
「でも、その代わりに分かった事があります。」
「ん?何が分かったの?」
「私のブーツを作った鍛冶屋さん!」
「えー!やったじゃん!」
「はい。装備担当の方と話をした時に、尋ねてみたんですよ。」
さっき、俺が話した道具担当以外に、装備担当が居たのか。
「その方が言うには、王都の中心部で店を開いている有名な鍛冶屋らしいです。」
「王都中心部か・・・。」
「名前はボルカール。詳しい住所は分からないけど、王都中心部で武具屋や道具屋で聞いてみれば、教えてもらえるって言ってました。」
「なるほど。」
「最後に、このブーツの側面にあるマークと同じ看板を探せばいいと言われました。」
そういうとグラーシュがブーツのふくらはぎ部分の外側にある“炎にトンカチと火鋏”のマークを見せてくれた。
そういえば、まじまじとこのブーツを見てなかったな。
もしかすると他にヒントが在るかもしれない。
しゃがんで丁寧に見る。
マーク以外の部分は、特に情報として使えそうなものは無い。
「グラーシュ、ちょっと足上げて!ソール見せて。」
「は、はい。」
素直にグラーシュが足を上げてくれた。
現代の靴はソールに何かしらの情報が書かれてことも有るし、特徴的なデザインになっていることも有る。
・・・が、残念ながら、特にソールは文字もデザインも無かった。
「なんかありました?」
「え?」
グラーシュの問いかけに、つい顔を上げてしまった。
やば!
モ、モロ見・・・・
じゃない!