第9話 新体制の説明
「嫌です!」
端的に、グラーシュに断られてしまった。
ん?
割と丁寧に話をしたつもりだけど・・・。
「なんか分からないところあった?」
「いいえ。話はよくわかりました。」
「そう。そしたら、なんで?」
「私は、ルラン様に付いていくと言ったのであって、付いてきてと言った覚えはありません。」
ははは、仰る通りです。
「あくまで、そういう体裁をとるってだけなんだ・・・お願い!」
「嫌です!・・・きっとボロが出ます!」
ふぅ、その通りなんだよね~。
というより、グラーシュが納得して心から協力してくれないなら、この方法は採用できない。
ってか、そうでなければ、採用したくない。
どうも強要するのって、嫌なんだよね。
お願いするのは好きだけど。
「分かった。今まで通りでいいよ。」
「はい。」
「もし仮に、俺が、3歳くらいの男児だったら、弟扱いしてくれる?」
「え?・・・それは・・・何を言い出してるんですか?」
グラーシュの心がぐらぐら揺れているのが分かった。
グラーシュは一人っ子だから、兄弟姉妹に興味があるだろう・・・。
それでいて、面倒見もいいから、弟や妹なんて・・・ぶっ刺さると思った。
この考えは、的中したっぽい。
「ちょっといい?」
グラーシュの手を取って、ホテルの陰に隠れた。
周囲は誰も居ないことを確認済みだけど、念のためだ。
良し!
3歳児に、へんし~ん!
おじいさんと先生から、なんにでもなれるって言われていたから、ぶっつけ本番で試しに念じてみた。
来ている服がぶかぶかになってずり落ちるのが分かった。
「―――――!」
グラーシュが声にならない声を上げたかと思ったら、急に抱き着いてきた。
久しぶりに顔に感じるムニムニ!
グラーシュが胸当てを装備する前で助かった!
ってか、良かった!
じゃない!!
呼吸が・・・できないっ!
必死の抵抗もグラーシュの力が強くて離せない。
ムニムニで興奮して頭に血が上るが、薄れかける意識・・・
ち・・・、ちぬぅ!
ち・・・・ぬ・・・・。
力が抜けた俺に気が付いてくれたのか、グラーシュが我に返ってくれた。
「あ!すみません。つい。」
「いいよ・・・。」
「ごめんなさい。」
「大丈夫だから。そんなことより、この姿になった時は、グラーシュがメインでいい?」
「はい!」
「ありがとうね。」
「・・・」
「どうしたの?」
「その姿の時は、手を繋いだり、抱きしめてもいいですか?」
別に、この姿じゃなくてもいいですよ・・・じゃない!
転生してからこっち、マジで自制心が弱まったような気がするなぁ。
「良いよ。そうじゃないと周りから見ても違和感あるからね。」
「はい!」
そういうと、また抱きしめられてしまった。
ははは、いつもグラーシュには色々してもらっているからね。
もう、好きにして~。
・・・
・・・・・
さてと、グラーシュの興奮も収まってきたようだし、そろそろ出発するか。
元の姿に戻ると、グラーシュはいつもの距離感にスッと戻った。
くっ!
これはこれで、悲しくなるわ。
無邪気な反応なんだろうけどさ。
とにかく、気持ちを切り替えて、今日の目的地を伝えて出発せねば。