第5話 初説教の休憩
「良いぞ。」
「ありがとうございます。」
ゆっくり手を伸ばし、おじいさんの手に乗るフクロウのお腹を掌で触ってみる。
こ、これは・・・
猫とは違う感触のモフモフ。
これはこれで、凄くイイな。
「いいじゃろ?」
「たまりませんね。」
「うんうん。」
おじいさんも御満悦だ。
「あの時、飼うって話をしたのは正解でしたね。」
「がはは。そうじゃろ~。」
「あ、そういえば、飼い始めるときのおじいさんの提案・・・どうなりそうですか。」
「ん?なんじゃったっけ?」
「アレですよ。・・・監視員にフクロウを付けるって話。」
「あぁ、それか。多分、ダメじゃな。」
「え?・・・何でですか?」
「儂がモフれなくなるじゃん。」
・・・
思い出すな~。
会社員時代を。
なんか上司の気まぐれに振り回されて、最後には、約束守ってもらえないやつ・・・。
「あの時と状況が違うんだよ。」とか・・・。
「お前の気持ちは分かるけどな。上がなぁ。」とか・・・言われたっけ。
・・・
転生先でも、ってか、何処に行っても、そういうもんなのかね~・・・。
「なんじゃ?」
「なんでもないですよ。」
「もうモフらんでいいのか?」
「ちょっと・・・力が入っちゃいそうで。」
「そうか。じゃ、しょうがないのぉ。」
おじいさんは、モフモフに夢中だ。
・・・
「それより、このフクロウを召喚して見たらどうじゃ?」
「へ?」
「今、何処から声を出した?」
「あ、すいません・・・。どういう意味ですか?」
「その通りの意味じゃ。」
「召喚して、どうやって使うんですか!?」
「お前さんは、儂の可愛いフクロウを“使う”のか!!」
「あ、ちょ・・・何をしてもらえるのでしょうか。」
「可愛いフクロウちゃんのする事なんて、決まっとろうが。」
だめだ。モフモフに夢中で、雑になってる。
思い出すな~。
会社員時代を。
ろくに教えて貰えないことが多かったもんな~。
これ、ほとんどの場合、とりあえずやってみると、「勝手なことやって!」って怒られるまでがセットなんだよね~。
そう分かっていれば、メンタルへのダメージもそんなに大きくないんだよね。
それを上回る学びを得ればOK・・・そこまでやって、“フルコース”ってね。
ふと先生を見ると、お楽しみ・・・じゃなくて、気分転換は終わったようだ。
「おじいさん、そろそろ休憩時間、終わりみたいですよ。」
「えーっ!」
はぁ。
この調子だと、確かに四六時中フクロウに監視してもらうってのは、出来る訳ないわな。
“フルコース”を1つ頂くとしますかね~。
「クソジジイ、いつまで遊んでんのよ!始めるわよ!」
先生もやる気満々だ。
「だそうですよ。」
「儂はまだ・・・」
空気を読んだフクロウは飛び立ってしまった。
あのフクロウ、分かってるじゃん。
これは、召喚が楽しみだ。
「もうちょっとモフりたかったのに・・・。仕方ないのう。」
おじいさんも切り替えてくれたようだ。
さて、後半戦行きますか。