第37話 引渡
さほど待たずに、アルディが輸送業者を連れてきた。
幌付きの馬車と騎兵4人の護衛付きだ。
大金払っただけのことはある。
「おはようございます。よろしくお願いしまーす。」
「早いね。荷物はそれかい?」
俺の挨拶に馬車の騎手が応じた。
「そうです。」
「レーゼン侯爵の城に届ければいいんだったな。」
「はい。」
「分かった。」
「これも一緒に渡してください。」
グラーシュが手紙の様なものを出した。
「あんたが美人の依頼主さんか。会えてよかったよ。それで、これは?」
「突然のことだったので、荷物を届けることをレーゼン侯爵には伝えてありません。ですので、この手紙を先に渡して読んでもらえば大丈夫だと思います。」
「分かった。」
やば!
グラーシュ、流石だな。
「それと、御代はこれです。」
カネを受け取った男は、中身を確認すると、満面の笑みを浮かべた。
「レーゼン侯爵家にできるだけ早く届けて欲しいんだが、何日くらいかかりそうかな?」
「そりゃ、すぐに持っていくから2日もかからないだろうな。」
ん?
なんかメチャクチャ対応良いな。
もしかして、メチャクチャ儲けたか。
まぁ、深く考えても仕方ない。
今回の取引は、授業料と手切れ金が含まれているから・・・。
ともあれ、輸送業者を見送って、無事終了。
「お疲れさまでした~。早速ですが、このまま出発です。カンタを迂回して、王都に行きまーす。」
・・・
カンタの淵を進んでいるせいか、魔物との遭遇はない。
結局襲われたのは、レーゼン侯爵領の北西の端のあたりにいたゴブリンだけ。
情けない敗走をしたけど、学びは多かった・・・かな。
いたって平和な移動が続いた。
「そういえば、あの巻紙・・・」
「あ、これですね。どうぞ」
グラーシュが速やかに手渡してくれた。
エラムはイイ子だから手綱を離しても、同じ調子で歩いてくれる。
ネロアとかだとこっちを確認してから暴走しそうだもんな。
「これは?」
「ニュームスです。」
「ニュームス?」
「ニュース・マジック・スクロール(NEWS Magic Scroll)、通称“ニュームス(NEWMS)”です。」
新聞・・・みたいなもんか?
開いてみると、文字がいっぱい書かれている。
次の瞬間、急に光り出した。
空中に映像が浮かんだ。
ホログラフィー?
アナウンサーらしき人間が、何やら昨日の出来事を語り始めた。
アナウンサーと映像が切り替わる芸の細かさ・・・。
まるで、ニュース番組を見ているようだ。
テレビが要らない分、ニュームスの利便性は、高そうだ。
「これは、ニュームスのプレミアム版の方です。」
「プレミアム版?」
「私もよく知りませんが、旅館で仲居さんから、プレミアム版と通常版があると聞きました。」
「・・・」
「プレミアム版は、1枚のスクロールで、複数人数が見れるように、映像が浮かび上がる魔法がセットされているんだそうです。」
「そうなんだ~。」
話をしている間も、ホログラフィーは続く。
「なんか、一時停止とか出来そうにないね。」
「そのようですね。・・・」
「で、このプレミアム版、どのくらい続くか知ってる?」
「内容によりますが、長いものだと3時間くらいのものもあるみたいですよ。」
「え!?3時間も?・・・この、今見ているやつもそんなに長いの?」
「いえ、これは5分位だと思いますよ。」
「良かった~。」
転生してまで長々とニュースをチェックするとか勘弁してほしいわ。
「内容は多くないと思います。何せ、旅館で無料配布していたものですから。」
ん?
プレミアム版なのに、無料配布?