第36話 さわやかな朝
え?
目が覚めた。
昨晩、食事の途中で失神してそのまま寝たんか。
幸いまだ外は暗かった。
これなら、輸送業者が来る前に、待ち合わせ場所に行けそうだ。
見渡すと、部屋の中に布団が三つ並んでいたが、真ん中で寝ていた俺以外は、居ない。
部屋の入口には出発の準備ができていた。
きっとグラーシュだろう。
アルディは何処かな・・・。
「おはようございます。」
グラーシュが部屋に入ってきた。
「おはよう。」
脳裏に昨晩の過激なイメージが浮かんだが、わりと冷静を保てた。
睡眠中に体験を消化できたのか・・・。
寝てる間に賢者にでもなったのか・・・?
まぁ、それは置いといて。
「二日酔いとか、大丈夫?」
「二日酔い?」
「頭が痛いとか、ない?」
「無いです。大丈夫です。」
「それならよかった。」
「はい。私の事よりも・・・」
「ん?」
「ルラン様は大丈夫ですか。私が気づいた時には、ルラン様は寝ていました。アルディからは、食事の途中で失神したと聞きました。何かに当たりましたか?」
はい、優しくも過激な色気に当たりました。
意識不明に陥る正面衝突の大事故です。
運転手は無事で何よりですが、こちらは危うくショック死するかと思いました。
・・・って、言えないもんな~。
「大丈夫だよ。なんか、懐かしい味を思い出して、感極まって卒倒しちゃっただけだから。」
「そうですか。それなら良かったです。」
そうだね。
グラーシュが、こんな言い訳を素直に信じてくれる子で、良かったよ。
「それと、準備ありがとう。すぐに出るよ!アルディは?」
「散歩って言って出ていきました。そろそろ戻ってくると思います。」
「そうか。それなら先にチェックアウト済ませよう。」
一応、アルディに出発するぞと思念を送っておいた。
これですぐに帰ってくるだろう。
「それと、気になってたんだけど、それ何?」
俺はグラーシュが持っていたポスターをまるけた様な巻紙を指さして聞いた。
「これは、後のお楽しみです。ルラン様なら気に入ってくれるかと思って。」
え?
俺、自室にポスター張るタイプじゃないし。
そもそも今は自室なんて無いし・・・。
何だろう。
チェックアウトを済ませて、旅館前に出ると、アルディが駆けてきた。
「すいません。」
「いいよ。このままカンタを出るからね~。」
旅館の人が3頭の白馬を連れて来てくれた。
ストークはグラーシュを見るなり、旅館の人を引っ張りながら近寄ってきた。
ネロアは・・・完全に寝ぼけている。
何故か俺ところに来た。
エラムがそれを見て、空気を読んだのか、アルディのところに行った。
慌ててアルディが、エラムを連れて来て、ネロアに跨った。
おいおい、大丈夫ですか、俺ら一行。
・・・
まぁ、俺が俺だから、仕方ないか。
エラムに跨り、いざ出発。
・・・
カンタの外に出た。
門の付近にアルディを待機させておいて、俺とグラーシュは少し離れた。
周囲に探知用の光の粒子を展開させてみる。
誰も居ない。
ラッキー、ラッキー。
速やかに荷物をゲートから出した。
後は、アルディが輸送業者と会って、こちらに誘導してくれればOKだ。