第34話 新しい体への心配
「その他に、新しい体のことでなんかあるかい?」
おじいさんが、割と心配してくれているような気がした。
「お気遣いありがとうございます。実は・・・あ!」
「なんじゃ?」
「相撲でアルディに歯が立ちませんでした。」
「がはは、それは、そもそもお前さんの体の強さとアルディのそれとでは、ダンチだったんじゃろ。」
「そうですか。この世界では私のホントの体の全盛期も大したことないって事ですよね。情けない話ですが仕方ないですね。」
「まぁいいじゃないか。自分の体になれたんだから。」
「そうですね・・・。」
「ん?」
「これで、あの6つの球に触るとどうなりますかね?」
「6つの球?あぁ、測定に使った球の事か?」
「はい。」
「測定結果は変わらないじゃろうな。」
「そうですか。」
「結局あの玉の性能の問題じゃ。」
「性能?」
「例えるなら・・・、同じ“測定不能”という結果が出るが、今までは“測定不能A”で、今は“測定不能B”といったところじゃな。」
「なるほど、変化していても、あの球では測定の出来ない変化って事ですね。」
・・・
「なんかさ~・・・」
先生が金貨をいじりながら口をはさんできた。
金貨に何かあったのかな?
「何です?」
「あなた・・・☆5の割に、修得、進んでるわよね~。」
え!?
「何言っとるんじゃー!」
慌てておじいさんが先生に駆け寄って言った。
「あ・・・ごめんなさい。」
我に返った先生がおじいさんに謝った。
「はぁ。今後、金貨遊びは禁止じゃ。」
「ごめんなさい。」
「ルランに、禁忌、禁忌って言っときながら!」
おじいさんが、初めて先生に強く出ている姿を見た。
「・・・」
先生は金貨を片付けて、素直におじいさんに差し出した。
・・・
どういうことだ?
そんなにナーバスになる事なのか?
「お取込み中のところ、ちょっとよろしいでしょうか。」
気のせいだろうか、背中を向けていた二人がビクっと動いたように見えた。
「他にもこのスキルを習得している人がいるんですか?」
・・・
「いないわよ。」
嘘臭いなぁ・・・。
「いないわよ!」
「じゃあ、なんで・・・」
「落ち着け、とにかく、今はお前さんだけじゃ。」
「!?・・・この2つのスキルを使える“先輩”が居るって事ですか?」
「居る・・・というか、居たというか・・・。」
「へ?」
「み~んな、死んじゃったんじゃ~。」
な・・・、なんだってーーーーー!
「もしかして、それでおじいさんは、新しい体の事を気にしてくれたんですか?」
「いや、それはシンプルに興味があったからじゃ。」
「ややこしいわっ!」
「ねぇ、そんなことより、あなた、銀貨無いの、銀貨なら我を失わずに楽しめる自信があるわ!」
「先生、今大切な話してるんです!それに、それは、やめといた方がいいですって!多分そういう問題じゃないから!」
「そうじゃ、お前は何も分かっとらんじゃないか!」
「そうなの?」
「そうじゃ。」
「いや、おじいさん、“そうじゃ”じゃねぇから!冗談言ってないで、ちゃんと答えて下さい!」
「そうじゃないの?」
「ややこしいわっ!!あー、もう!銀貨の話は、また今度きちんと打合せしましょう!」
「絶対よ。」
「で、先輩たちはなぜ亡くなったんですか?」
おじいさんは観念したのか、急に、神妙な面持ちになった。