第33話 葛藤の末に
「なーにやってんじゃ、お前さんは。」
気が付くと、いつもの白と黒の世界で寝そべっていた。
俺を覗き込むおじいさんは、満面の笑みを浮かべている。
葛藤の末、意識を失ったのか?
大学生、会社員と経て、酔っ払いに絡まれるのは慣れている・・・。
しかし、今回のは全く状況が違う。
むしろ、俺が今まで健全な生活を送っていたことを証明したようなものだ。
「あれは失神してもおかしくないでしょ。」
「素直になればよかったんじゃないのぉ?」
少し離れたところから、先生の声が聞こえた。
「酔った勢いとか、そういう問題じゃないでしょ!」
振り向きざまに応えた。
先生は、背を向けて座って・・・何かしている?
「先生、なにやってんの?」
近づいて声をかけてみる。
振り返った先生の手には金貨がある。
「はぁ?」
つい気の抜けた声を出してしまった。
先生は、グラーシュから預かった金貨で遊んでいた。
「乙女じゃな、光物には弱いんじゃ。」
「そうですか・・・。それならしょうがないですね・・・。無くしたり、壊したりしないでくださいね。」
「するわけないでしょ、そんなこと!」
そうだよね。
気に入ってるものを粗雑には扱わないか・・・。
「使う時には出しますからね」
「絶対いやっ!グラーシュが持っているところから出しなさいよ。」
参ったな・・・。
こんな事、想定外だ。
とりあえず、グラーシュにお願いするか。
グラーシュ・・・。
「がはは、お楽しみのところ、悪いが、自分の体おめでとう。これで【白き理】☆5じゃ。」
おじいさんの言葉で我に返れた。
危ない、危ない。
「あ、そうね。【黒き理】も☆5ね」
金の魔力から解放されたのか、先生も我に返ってくれた。
「ん?☆2つ分追加ですか?」
「あなた、体の組成の前に、土から闇の粒子の回収したじゃない。だから☆2つ追加よ。」
「なるほど。そうすると、【白き理】と【黒き理】☆5で並びましたね。」
「そうね。おめでとう。」
そういうと、先生は、金貨の方に歩いて行った。
そして、案の定、先生は金貨をいじり始めた。
ホントに好きなんだな~。
「で、どうじゃ、自分の体は。」
「あ!人の体じゃなくなるって言ってましたよね?なんで、あんなに乱れるんですか?」
「何を言っとるんじゃ、乱しているのはお前じゃろ!」
・・・
「どういうことですか?」
「女性が乳揺らして近づいてくる状況そのものと、お前の男性としての反応は、1つの現象ではないじゃろ!2つの現象じゃ!」
言われてみれば・・・その通りだ。
「・・・」
「なんじゃ」
「・・・」
「文句でも、あるのか!」
「おじいさんは、女性が乳揺らして近づいてきたら、興奮しないの!」
「興奮する!絶対に興奮する!」
「な、なに言ってんですか!言ってることメチャクチャじゃないですか!」
「メチャクチャじゃない!」
「メチャクチャでしょ!」
「お前さんが、乱れて困るのであれば、お前さんは乱れないようにする必要がある!儂は乱れても、イイ!」
「・・・」
「がはは、冗談じゃ!」
「でも・・・言いたいことは分かりました。」
「それは良かった。自分の心と体は、ちゃんと向き合って、日々精進じゃ」
「はい。」