第28話 ラゴイルの輸送手配
ラゴイルの体はすぐに実家に帰したいから、勿体ぶっていても仕方ない。
「家具は、何で出来ている?」
「木・・・ですかね。」
「それなら、林業従事者が今、木を取り扱っているところを見つければ良い。」
「見つけれるんですか?」
「多分ね。」
カンタは広い。
馬を使っても1日でまんべんなく回ることはできない・・・
いい機会だから、光の粒子を使った偵察・探索をカンタ中に巡らせてみるか?
でも、張り巡らせて、24時間監視なんて、めんどくさくて、俺がしたくない。
カンタ内を、一回だけサーチすればいっか。
「ちょっとごめん。多分すぐ済むと思うけど、周囲警戒お願い。」
「はい」
「御意」
――!・・・あぶね!
ここは集落の真ん中、カムフラージュせねば・・・
両手を広げたり、腕組んだり、大げさに天を指さしてみたり・・・
最後は・・・合掌して・・・
「ふん!」
ってね。マジで恥ずかしいわ。
どうやったらカムフラージュしなくて済むようになるんだろう。
俺の体から、小さな光の粒子の固まりが上空に上がり、四方八方に散開・・・・。
と思った瞬間、元の場所に集結し、戻ってきた。
え?早すぎない?・・・
まぁ、分かったからいいんだけどさ。
分かった事は、カンタが概ね直径30kmくらいのほぼ平地である事。
それに、そこかしこに、クヌギの森がある事。
そして、カンタの南で今、クヌギを伐採している場所があって、輸送用の荷台や荷車への積み込み作業も並行して行っていること。
「済みました~。出発しますよ~」
「御意」
「え?」
グラーシュは呆気にとられている様子だ。
「ホント、ビックリだよね~。さぁ、行くよ~。」
いや、俺もびっくりしているから、その気持ちはよくわかるよ。
でもね、急いだ方が良さそうなんだよね。
・・・
2時間くらいで到着した。
伐採作業は終了していたが、積み込み作業は続いていた。
積み込み作業中の作業員に話しかけるのは気が引けるから・・・
現場監督と思しき中年男性を見つけた。
現場に立ち入らないように配慮しつつ・・・少し離れたところから・・・
「すみませーん。お忙しい所、ちょっといいですかー?」
「!?」
気が付いたようで、近づいてきてくれた。
「なんだ、あんた。なんか用か?」
「ちょっとお聞きしたいことがありまして・・・」
「だから、なんだい?」
「輸送業者さんにお仕事をお願いしたいと思ってるんですが」
「仕事?」
「えぇ、レーゼン侯爵宛ての。」
「ほぉ。レーゼン侯爵ねぇ。」
「どんな荷物?」
「ちょっとそれは言えないんですけど、大切なものです。」
「荷物の内容は言えない・・・か」
「えぇ。」
「訳の分からない荷物を輸送となれば・・・値が弾むぞ。」
「承知してます。」
「ふーん。・・・うちでやってやろうか?」
「いくらですか?」
「そうだなぁ、20ゴールドだ。どうだい?」
どうと言われても、相場が分からない。
ちゃんとおカネの事は勉強しないとダメだな~。
ともあれ、20ゴールドは相場より高そうだな。
なにせ言い値だもん。
まぁ、でも俺の不勉強の招いたことだし・・・
おカネの勉強の大切さを学んだ勉強代と実習費も含まれていると思って、払いますか・・・。
後でグラーシュに教えてもらおう・・・。
「いいでしょう。20ゴールドでお願いします。」
「荷物は?」
「明日の朝、カンタの東門の外でお渡しします。サイズは・・・あの荷車に乗るくらいですね。木材で梱包した箱になります。」
「重さは?」
「成人男性3人で持てるくらいです。」
「分かった。」
「ありがとうございます。御代は、明日荷物を渡したときに渡します。」
俺は振り向いて、少し離れたところに居たグラーシュを見る。
「話はまとまりましたよ、グラーシュ様!」
「え?」
グラーシュが驚きの表情を見せる。
「はやく~、こっちこっち。」
「あ、はい。」
グラーシュを急がせた。
「カナールフォンカンタのペーターだ。依頼内容は分かった。よろしく。」
カナール・・・運河?
やはり、輸送業者だったのか。
「ペーターさん、よろしくお願いします。」
ペーターの差し出した手をグラーシュが握って、晴れて契約成立。
「それでは失礼します。」
詮索されても嫌だから、グラーシュに続いて一言に加えてその場を後にして、東に向かった。
・・・
「先に言ってください!」
グラーシュが、ぷんすかしている。
可愛いな。
「ごめんごめん、まさか最初に声をかけた相手が輸送業者で、そのまま契約になるとは思わなかったんだよ。」
「なんで、私なんですか?」
「アレがアレなんで・・・」
「またそれ。」
「ははは、また今度説明するから。ごめんね。」
アルディは召喚された存在だし、俺は“空”容疑が掛かっているから、グラーシュしかいないんだよね。
「それと、今夜は、できるだけ東門に近い宿泊施設を利用しよう。」
2人とも頷いてくれた。
転生してから、初めての宿泊施設だ。
どんなんか楽しみだ。