第26話 初めての集落?
カンタに着いた。
先日の集落とは入村からして違う。
衛兵は4名、いずれも制服着用だ。
こんなに違うかね。
「止まれ!」
「入場料ですね。」
グラーシュが一歩前に出た。
お財布係の速やかな対応、素晴らしい!
「よろしい。で、カンタ入村の目的は?」
え?やばいな。持っている死体をレーゼン侯爵に送ろうと思って・・・なんて言えるわけも無く・・・。
守衛所がチラッと見えた。
すげぇ・・・衛兵の為に馬まで用意されているし。
こりゃあ、怪しまれると、ゴブリンのように簡単には撒けなさそうだな~。
参ったな~。
「観光です。」
「観光?」
「この辺のことを詳しく存じ上げないのですが、レーゼン侯爵からカンタには素晴らしいクヌギの木があると聞きましたので、是非拝見したく。」
「ほう、侯爵の・・・。楽しんでいってくれ。」
アルディ!ナイス!
はぁ、助かった。
・・・
入村してまた驚いた。
カンタは、相当デカい。
ここまで大きいのに、集落扱いなのか・・・。
もしかして、レーゼン侯爵の領地と城は、ものすごい大きいんじゃないか。
だとすると、ラゴイルが狂ってしまったのは、本人の責任はもちろんのこと、周りにも責任の一端があったかもしれないな。
デカすぎる領地、有り余るおカネ・・・自分を見失った悲しい男か・・・。
同情はしないけどね。
さて、輸送業者を探さねば。
ん-、こういう場合、同業者組合・・・ギルド・・・案内所・・・お役人さん辺りに聞いてみるのが良いか。
ラゴイルが接待を受けていたのは、お役人さんや力のある組合の可能性は高い。
一方で、カンタが接待上手な集落だとしたら、小さい組合だって、レーゼン侯爵と繋がるチャンスを狙っている・・・はず。
そんな野心に燃える小さい組合をこのデカい集落で探す・・・か。
それに、ここは王都とレーゼン侯爵領の間に位置するから、あるはずなんだよな~、輸送業者。
観光目的で入村しているんだし、パカパカと馬で観光しながら、荷台、荷車・・・輸送に使う物を見たら声掛けてみるか~。
・・・
・・・・・
カンタ村には、そこかしこにクヌギが生えていて、あんまり“観光名所”って感じがしない。
他の集落に比べ、クヌギの本数が多ければ、確かに、クヌギの多い集落って特徴を持つことになるけど。
ただいっぱい生えているってだけで、観光名所って言われても、パンチが利いてないというか・・・。
それとも、この世界では、多いだけで観光名所になっているのかな。
まぁ、分からんことは、住民に聞いてみるのがいい。
営業でも田舎モンが都心の事なんてわからないから、よく教えてもらったな~。感謝しかないわ。
こっちでもうまく教えて貰えると助かるんだけど・・・。
「すいませーん。」
エラムから降りて、畑で草刈しているおばあちゃんに声をかけてみた。
「はーい。」
おばあちゃんが立ち上がって、こちらを向いてくれた。
ブン!
あぶねっ!
振り向きざまに鎌の刃が回ってきた。
咄嗟にアルディがネロアから飛び降りてきた。
「大丈夫、大丈夫。」
さて・・・と。
「カンタ村は、クヌギの名所だと聞いて来たんですけど・・・」
「あぁ、そうかい、良い時期に来たね。今なら中央広場に行けばいいと思うよ。」
「中央公園?」
「そう。中央公園。向こうに見える大きな建物、あれはこの集落で一番大きな建物なんだけどね。その裏に中央公園があるの。行ってみればわかるわ。楽しめるわよ。」
楽しめる?
どういうことだ?