更なる戦争の予感
数日後ー。
「相談とは一体なんですか?」
帝城の一室で、エリシアはウェレスにそう問いかけた。
「端的に言うぞ。近いうちカルミア王国が攻めてくる」
カルミア王国とエストリア帝国は犬猿の仲だ。
とは言え、軍事面ではエストリア帝国の方が格上だ。まともに戦えば、エストリア帝国に軍牌が上がるだろう。
しかし、リベスタ教国と戦争状態の現状で、カルミア王国が参戦すれば、エストリア帝国側が押し負ける可能性は高いだろう。
恐らく参戦してくるならば陸路だ。カルミア王国の軍船等海上戦力の規模が小さく、大した兵力を輸送する能力は低い。
それに加えて、帝都アル・バレは海に面しているが、鉄壁の防御設備があるため、海上からの突破は困難だ。
それを含めて考えると、陸路で教国と帝国の戦線に加わるか、背後を取るか、或いは無視して帝都を目指すかだろう。
「私も参戦しろと言うことでしょうか?」
「違う、そうじゃない。妾が自ら前線に立つ……その間の帝都の守りを任せたいのじゃ」
女帝はそう答えた。
「妾が帝都を離れる間、この都の戦力は一万にも満たぬ……そこを突かれれば、一貫の終わりじゃ。以前のドラゴン騒動の例もある、そう油断はできぬ」
「そう言う事でしたか。なら任せてください」
それからウェレスは口を開いた。
「それと、お主は帝国貴族じゃ。帝国が更なる窮地に追い込まれれば、全力で守る責務があるぞ?」
ウェレスはそう笑みを浮かべた。
「それで私に貴族位を……?」
「それもあるな」
ウェレスはそう言い、その場に立ち上がった。
「エリシア、お主は生まれ育った国を裏切れるかの?」
ウェレスのその言葉に、驚愕する。自分の生い立ちなど未だ誰にも話していない筈だ。
「な、なぜ、それを......?」
「そりゃのぉ、身元不明の化け物じみた力の持ち主の身辺調査はするだろうに。だとしてもエルミール家の令嬢とは思わなんだがな」
どうやら、自分の過去を少なからずは知っているようだ。
「正直、エルミール家は嫌いです。大嫌いです……それとカルミア王国も大嫌いです、正直ぶっ潰してやりたいです!」
「ふふっ……お主ならそう言うと思っていたぞ? それと、別にエリシアの過去を深く詮索する気もせん。だからの、頼むぞ?」
「分かりました。帝都は私に任せてください」
そう答えると、女帝は微笑んだ。




