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貿易都市アル=ミサド



エリシアとリアは二日間、平野を歩き続きていた。


辺りには村や街らしきものが見当たらず、食料も水も既に尽きそうになっていた。



「そろそろ、街でも見つけないときついですね......」

 


エリシアとリアは、最後の食料であるパンを食べながら歩いていた。



「でも、なんだか海の匂いしませんか?」


「海の匂い?」


リアはそう言っているが、エリシアには海特有の塩の匂いは匂わなかった。


魔族は人間より嗅覚が優れているのだろうか。



「それが本当だとしたら、何かしら大規模な街があるかもですね」



恐らく、近場にある海と言えば内海であるミサド海だ。


エストリア帝国や、その他数カ国との貿易が盛んに行われており、カルミア王国の玄関口の一つでもある。



勿論、そういう場所には人口が多く密集するものだ。


エリシアの知ってる限りでは、最も大規模な都市であるアル=ミサドは、人口二十万人を超える程で、エルミール管轄領では最も重要な都市でもある。



「今日のうちに、何処かしら街に行きますよ。じゃないといい加減死にますし」


「分かりました。海の匂いがする方に行ったほうが良いですか?」


「そうですね。案内頼みます」



エリシアはリアの後について行く事にした。


しばらく、リアの背後について歩いていると、視線の遠くに青い海が広がっているのが見えた。



「凄いですね。本当に海が......」


「魔族は人間よりずっと鼻が良いんですよ」



やはり、魔族は鼻が利く様だ。


魔族と獣人族には奇襲はするなーーと言う言葉は有名なものだ。


この言葉の深い意味は、エリシアは知らない。


しかし、魔族や獣人は鼻がいいから、奇襲は直ぐバレると言う意味なのだろう。



エリシアは、海岸沿いに街があるのを見つける。


規模はかなり大きい様で、この規模の大都市ならアル=ミサドなのかも知れない。



「やっと、街が......安心しました。これで餓死しなくて済みそうですね」


エリシアの焦っていた気持ちが若干落ち着く。


このまま街が見つからなければ、餓死するところだった。兎も角、今日は寝床にも、食事にも風呂にもあり付けそうだ。



「それと、フードかぶってくださいね」

 


エリシアは、改めてリアに忠告する。


魔族と一緒に居るとなれば、店や宿を断られる可能性は高い。



「勿論、分かっています......」



リアはフードを深くかぶる。


これなら、ぱっと見で彼女が魔族だとも分からない筈だ。




✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎




エリシアとリアは眼前に見える街へと向かった。



街は、高い石壁に囲われており、大きな門には衛兵が立っており、商人らしき人物たちの行列ができていた。



エリシアとリアもその列に並び、街へと入ることができた。



衛兵達に、メイド服と魔術師風の格好をした少女は側から見たら相当怪しいだろう。


しかし、怪しまれたものの何とか中へと入ることができた。



「にしても、賑わってますね」


「はい......そう、ですね」



リアはキョロキョロと辺りを見渡す。


辺りには、露天が立ち並び人々が行き交い、賑わっていた。

 


リアは、無意識のうちだろうかーーエリシアの裾を掴んでいた。


やはりたくさん人間が居るのは、怖いのだろう。



「大丈夫ですよ。私が居ますからね」


「エリシアさん......」


リアはふっと、安心したのか微笑を浮かべる。



「兎も角、安宿を見つけないとですね」



エリシアは辺りを見渡してみる。


露天の看板には、"アル=ミサドにようこそ"と言う文字があった。


やはり、ここはアル=ミサドの様だ。



(それなら、都合が良いですね。このままエストリア帝国まで行きましょうか)



アル=ミサドは帝国行きの船が出ている筈だ。


それに乗って、向こうまで行けるだろう。





暫く歩いているとメインストリートから外れたところに、ボロボロの宿を見つけた。


見るからに、安そうだが資金も少ないので、丁度いいだろう。



「リア、今日はあそこに泊まりましょう」


「久しぶりにまともな寝床で寝れますね」


「そうですね......いい加減、草の上で寝るのは辛いですからね」



エリシアと、リアが宿に入っていった。



宿の中はカビの匂いが充満しており、カウンターには人相の悪い受付の男がいた。



「二人です。一泊したいのですが......」


「二人で、銅貨4枚だ」


エリシアは、男に銀貨を一枚渡す。


男は、お釣りの銅貨六枚を放り投げる。



「部屋は好きなところを使え」


「わかりました。ありがとうございます......リア、行きましょう」


「は、はい......」





エリシアは、目についた部屋の中へと入る。



部屋の中はカビ臭く、一人用のベットが一つだけあった。


ガラスのない窓の外は、湿った薄暗い路地裏が顔を覗かせていた。



「良い部屋とは言えませんが、野宿よりはマシですね」


「ううっ......臭いがきつい」



リアは宿に入った時から、鼻を摘んでいた。


鼻の良い魔族にはかなりきついのだろうか。



(リアをここに長居させるのは可哀想ですね......)



ここにいるのは、寝る時だけにして明日の準備や食事などで外で時間を潰した方が良いだろう。




「折角ですし、買い物でもしましょうか」



エリシアはリアにそう言った。

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