地下書庫
ミリスとシュラミアは最奥までたどり着く。
そこは、身長の何倍もある様な本棚が並べられ、様々な魔道具が彼方此方に置かれている大広間だった。
「此処が地下書庫……」
「ええ、そうです。お互いに求めているものが此処にあります」
ミリスは真っ直ぐと本棚のある方へと向かった。シュラミアは魔道具の方へと向かう。
ミリスはしらみ潰しに本棚に目を通していく。
ぱっと見でもこれら全てが一級品レベルの魔導書である事は明白だ。エルミール家でも数冊程度しか保有していないものが何千、何万冊と置かれている。
探すのも一苦労だ。とは言え、時間を掛けるわけにも行かないだろう。外に情報を漏らした者はいない筈だが、襲撃がばれるのも時間の問題だ。
しかし、幾ら探しても太古の大魔法に関する魔導書が無い。正直此処になければ、世界中どこ探しても見つからない可能性が高い。
「目当てのものは見つかりましたか?」
その時、背後からシュラミアが話しかけて来る。
「私は見つけましたが――その様子だと其方は見つけられてないみたいですね」
「全くない。と言うか本の量が多すぎて、十分の一も見れてないし……」
「それと間接的ではありますが、貴方の求める物に近そうな物品を見つけましたよ」
シュラミアはそう言うと、水晶玉を渡して来る。白く濁った、とても上質とは言えない物だった。
「これは命を代償に、大罪級の大悪魔と強制的な契約を結べる物です。使用用途としてはこれを破壊するだけでいいみたいですね」
「と言うことは、私の命を捨てれば死者を蘇らせれるの?」
エリシアには今まで悪い事をしてしまった。死んで、蘇らせてあげれるなら、別に命くらい捧げても構わない。
「相手方の死体が、死後直後なら問題ありません。流石に損傷が激しければ、無理でしょうね」
「それなら無理。流石にあれじゃね……」
エリシアの遺体は、愚かな反逆者として民衆の前でズタズタに引き裂かれて、川に流された。
その光景を思い出すだけでも、未だに気分が悪い。
その時にら何かの一押しがあれば、エリシアを罵倒し、遺体を散々弄んだ愚民を殺戮して回っただろう。勿論、その際は親兄弟も例外なく。
それに問題点をもう一つ挙げれば、自分が死んだ後で、仮にエリシアが復活しても後ろ盾のない彼女ならまた直ぐに死体に戻ってしまうかもしれない。
ぶっちゃけ、弱い。この世界で生きていくには余りにもエリシアは弱い。
「その案は無しね。一応この水晶玉貰っておくわね。何かに使えるかもだし」
「そうですか。しかし、時間に猶予がない事もお忘れなく」
「そんなの私だって分かってるから」
ミリスは再び本棚に目を通していく。しばらく目を通していくと、興味深い魔導書を見つけた。
「世界を巻き戻す魔法……?」
表紙にはそう書かれていた。ミリスの求めていた物と少し違うが、これでも構わないかもしれない。




