驚愕と衝撃
本編にはあんまり関係してこないお話です。ミリスの過去話とエリシアが何故、時間を遡り蘇ったかの裏話的なやつです。
✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎
エリシアが一度死ぬ前、この世界が分岐する前の話だ。
とある大陸の半島のほぼ全てを領土とするカルミア王国。
その王国の有力な貴族としてなお馳せているエルミール家があった。
そのルーツは魔王を討伐した大賢者の末裔であるとされ、歴代強力な魔導士を輩出してきたのだ。その魔導士を戦力として提供する代わりに、王国内での地位を確固たるものにしていた。
その当家の令嬢にして、次期当主として期待されているミリス・エルミールは、ある日突然執事に呼び出された。
その連絡は突然だった。
「エリシア様が敵国に機密文章を暴露し、即時処刑が決定した様です」
「はぁ?」
執事の知らせに、ミリス・エルミールは声を漏らした。
「愚図のお姉様が……⁈ あんな卑屈で臆病な奴がそんな真似出来るわけ無いでしょ」
ミリスには姉がいた。魔導士の家系にも関わらず、魔法の一つも使えない落ちこぼれだ。
そのせいもあってか、邪魔者扱いされ、周りの人間からも虐げられていた。とは言うミリスの加担者なのだが。
「とは言え、そう判決が出てしまったので……」
「納得が行かない。どうせ、邪魔なお姉様を誰かが消しかけたんでしょ?」
「しかし、ミリス様はエリシア様はお嫌いだった筈では?」
「見ててムカつくだけ、それでもクズ兄よりはマシだけど、とりあえず事情を聞きに行くわ」
ミリスはそう言い残し、その場を後にした。
✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎
ミリスはエリシアに今まで散々暴言や暴力を振るって来た。しかし、元はとても仲が良かったのだ。
今より幼く、純粋無垢だった頃、魔法は使えないけど、優しくて色んなことを教えてくれた。
幼いミリスは少なくともエリシアを好いていたのだ。
しかし、その仲を引き裂いたのは実母だった。
魔法が使えない様な愚図とは関わるなと――。
シリアは幼いミリスをエリシアから引き裂くために、酷い仕打ちをミリスに行った。
それをエリシアと言葉を交わすたび、会うたびにだ。
当時のミリスはシリアよりも魔法面で劣っており、反抗はままならなかった。
そうして行く間に、エリシアに対する潜在的な拒否感が生まれたのだろう。
勿論、こうした幼少期を過ごしていれば今の様にねじ曲がった性格になるのも無理はない。
しかし、今でも何処かしらで姉を愛している気持ちがあった。だからこそ止めようと思い立った。
しかし、それは叶わなかった。
と言うのも、処刑が相当の前倒しになり、ミリスが事情を聞きに行く前に殺されたのだ。




