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無能への粛清


翌日――早朝。


議会室には、貴族達が集結していた。


その全ては、都市長であるミスラに向けられていた。



「ヴェルダとゴーセルが死んだとはどう言うことだ⁈」


「そもそも何故モンスターがこの様な内地に現れるのだ⁈ 意図的に都市長が呼び込んだのではないのか!」


「これは、お前の監督責任が問われるぞ!」



老エルフ達は叫び散らす。


ヴェルダとゴーセルが死亡した知らせを受けて、緊急集会が開かれた。


老エルフ達の怒声は、いつもの比になるものではない。


そもそも、本当にミスラがモンスターを呼び込んだと思っているのか、単に陥れたいのかは分からないが。



「……」



ミスラは飛び交う怒声や、それに混じった罵声を黙って聞いてた。




「なんとか、答えたらどうなのだ!」


「最悪お前も、責任とって死んでもらうぞ!」


「何か喋ったらどうなんだ⁈」



暫くの時間をおいて、ミスラは初めて口を開いた。



「……そうね。私もそろそろやらないとって思ってたの」



ミスラがそう言い、ゆっくりと手を振り上げると、鎧で全身を固めた数十人の騎士達が、扉を開き議会室に入り込んでくる。

  

それは、都市長の直属部隊である聖霊騎士隊だ。


その名の通り、精霊術で肉体を強化し、近接、遠距離でも対応できる彼らは、精鋭中の精鋭である。



「もう少し、自己利益だけじゃなくて国の為に行動できたらこんな事しなくても良かったのにね」



ミスラが手を掲げると、精霊騎士達は一斉に鞘から剣を抜いた。



「ミスラ様、後はお任せください」


一人の精霊騎士――副隊長、ゼーア・ミハイルが口を開いた。



「分かったわ……変な事頼んで悪いわね」


「その為の私達、精霊騎士ですから」



ゼーアは目の前の殺すべき、無能達に視線を向ける。



「ど、どう言うつもりだ⁈」


「これは叛逆だぞ!」


「死罪だ! 都市長もお前達も皆死罪だ!」



貴族達は再びギャーギャーと騒ぎ立てる。未だに自分達が置かれた状況を理解していない様だ。



そんな彼等にゼーアは冷酷な視線を向ける。


「ヴェルダとゴーセルは共謀し、都市長とその客人を殺そうとした。これこそ紛れもない反逆罪だ。お前達も同罪……これは正当な粛清である」



ゼーアは覚悟を決めた。


自分に言い聞かせるように、そう言うと剣を構える。



「ここに居る貴族達は皆殺しだ。一人も生かすな!」



ゼーアはそう宣言した。


なんの戦闘能力も持たない老人達が、精鋭の騎士達にまともな抵抗が出来るわけも無く、一方的に殺害されていった。




国の為に、引いては民の為に――その為に道徳を捨てさる。昨日の夜の出来事は、その覚悟をミスラにさせるだけの事はあった。




「……ッ」



ミスラは議会室の外で、壁に寄り掛かり、"事"が終わるのを待っていた。



「これで良いわよね。きっと……」



自分の命令一つで数十人の命が消え去ったのだ。その罪悪感は重石の様にミスラの精神にのしかかってくる。



「それは、分かりかねません。その答えが、解るのは何十年先の事ですから」



ミスラの隣に立っている大男――精霊騎士達の隊長であるリーンデバイト・フォールンはそう答えた。



「今出来るのは、自分の選択を信じる事だけよね」


「……そうですな。とは言え、休んでる暇はありませんよ。モンスターの大群がもう直ぐそこまで来ているのですから」


「そうね。でもきっと大丈夫よ。こっちには竜殺しの英雄(エリシア)がいるんですもの」



きっと彼女達がこの危機から救ってくれる――少なくともミスラはそれを確信していた。

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