復活
「うっ……ここは」
エリシアは目を覚ますと、辺りを見渡した。
辺りはまだ暗い。そう時間は立っていない様だ。
屋敷は半壊し、辺りには飛散した瓦礫の残骸で埋め尽くされていた。
近くにはアラストルとレーマの姿があった。
近くにはあのリザードマンの鱗と思われる、残骸もある。アラストルが処理をしてくれたのだろうか。
「目を覚ましたみたいだねー」
アラストルは相変わらず、呑気そうな雰囲気だ。
「アラス、レーマ……助けてくれたんですね」
「まぁねー」
「あれだけの傷を回復魔法で治したのですか?」
「そりゃ無理だよー。あれは一種の呪いみたいなもんでさー、治るもんでも無かったし」
「なら、どうやって……」
「エリシアを悪魔にしたんだよー。と言っても、悪魔になるのは人間としての生を終えてからだけどねー」
アラストルの口調は、いつも通りの暢気で、穏やかなものだ。
「私を悪魔にですか……」
「そうでもしないと、助からなかったからねぇー。それにボクと同じ最上位の大罪の悪魔になれる予定だし、まぁ悪い話しじゃないと思うよー」
助けてくれたのは本当に有難いし、本当に感謝している。この際、悪魔になる事を運命付けられたのは、仕方がない事なのかも知れない。
「兎に角、ありがとうございます。アラスが居なければ死んでいました……」
エリシアは安堵感からか、突然に涙が溢れ出た。
今までに感じたことがない程の苦痛と確実なまでの死の恐怖――その全てから解放されれば、泣き崩れるもの当然だ。
「そう泣かないでよー。リアには内緒だからねぇ? エリシアに何かあったって知ったらめんどくさいからね」
「分かってますよ……でも、少しの間くらいは泣かせてください……」
「しょうがないねー」
アラストルは、座り込み泣きじゃくるエリシアを抱きしめた。
「まさか悪魔が人を抱擁するとになるとはね。まっ良いんだけど……よしよし、怖かったねー」
「ううっ、アラスっー!」
残虐非道と恐れられた悪魔が人を優しく抱きしめるなど、側から見れば理解し難い光景である。
「我が主人から、あの様な寵愛を受けられるとは、全くけしから……いや、羨ましい。羨ましすぎるぞ!」
その光景を見て、羨ましそうに嘆く悪魔と言うのも、また実に可笑しなものだ。
兎も角、今倒したモンスター達は尖兵に過ぎない。本隊である数万の軍勢は今尚差し迫っているはずだ。
決戦の時も近いに違いない。
 




