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魔族の少女ー2



エリシアは、盗賊の胸元を掴み、宙へと放り投げる。



「うふぁ⁈」



盗賊は呆気ない声をあげて、高く飛び上がる。



少し離れたところに、落下した彼が生きているとは誰も思わないだろう。




「な、なんだこのガキは......?」


「ま、魔法か⁈」



他の盗賊達は何が起きているのか理解が追いついていない様だった。


エリシアは、《鑑定眼》で盗賊達のステータスを確認したが、一般人に毛が生えた程度のものだった。


恐らく、雑魚専門と言ったところだろうか。





それからは、早かった。



エリシアは斬りかかってきた男の剣を素手で、掴んで粉砕し、殴る。


別の男が、メイスを振り下ろしてきたときは、素早い身のこなしで回避し、蹴りつける。


更に、近くにいた男を掴み宙に放り投げる。



オークすら、一撃で仕留めるエリシアの物理攻撃を食らって生身の人間が生きていられる訳がない。


恐らく全員が絶命している筈だ。



「大丈夫ですか」


エリシアは自分の背後で、怯えて縮こまっていた魔族の少女に声をかける。



「あ...ありがとう...ございます......」



少女は辺りを見渡し、盗賊達が倒れてるのを見て、安心したのか安堵の表情を浮かべる。



「一体なんで、あんな奴らに?」


「......見ての通り私は奴隷です。生贄として殺されるところを逃げ出してきました」



魔族の奴隷は、そう珍しくはない。


2年前、カルミア王国含む同盟軍と魔族との間で大規模な戦争が行われた。


この戦争は、人間側が先手を仕掛けたと言うこともあり、戦局を有利に進め、幾つもの魔族の都市を陥落させた。


その際に、多くの住民が奴隷として売り払われたそうだ。恐らく彼女もその生き残りだ。




生贄というのも、一部の貴族で流行している新興宗教の儀式だろう。


人間国家での魔族の命は安い、逆も然りだ。



「それで、貴方の名前はなんでしょうか?」


「わたしは、リア・カルスティラといいます......」


リアと名乗った、少女はそう名乗った。

 


「リアですか......」



エリシアはリアのステータスを確認する。





  ーーーーーーーーーーーーーーーー


  リア・カルスティラ 16歳


  レベル:20

  体力:55

  精神力:180

  魔力:260

  筋力:70

  スキル:《魔法の極み》


  ーーーーーーーーーーーーーーーー




リアは特に偽名を使っているわけでもない様だ。


それよりも驚いたのは、外見的にはエリシアと同じか、少し幼いくらいなのだが、2歳も年上だったと言う事だ。



「私も名乗れ遅れました。エリシア・エルミールといいます」


エリシアはリアに名乗り返した。


「そ、その...なんとお礼を言えばいいか......」


「本当にそうですよ。私も追われている身ですので、かまっている暇はなかったのですが」


「魔国連邦まで連れてってくだされば、お礼はたくさんします...! 一応、貴族の生まれですので......」



どうやら、リアも貴族の生まれの様だ。


思い返せば、カルスティラと言う姓を聞いたこともあった。


ずっと前に読んだ本で、魔国連邦の大貴族にカルスティラ家と呼ばれる貴族家があるそうだ。



「そうですね。リアの親御さんに、お礼は弾んでもらいましょうか」


「そうして、頂けると嬉しいです......」



とは言え、魔国連邦に行くには相当大変だろう。


第一、人間国家とは軒並み仲が悪く、国交はない。唯一、友好的な人間の国はエストリア帝国程度だ。


そうなると、エストリア帝国にはどのみち行く必要がありそうだ。



「これから、エストリア帝国まで向かいますけど、大丈夫ですよね?」


「勿論、わたしは大丈夫です」


リアはそう頷いた。

 


エリシアは、リアの服装を見る。


ボロ布一枚を纏った彼女は痩せこけており、見るからに痛々しい。 


流石に、こんな格好ーー更に魔族の少女を引き連れて歩いていては悪目立ちしてしまうだろう。



「リアに着替えの服あげますよ。流石にその格好ではあれですし」


エリシアはそう言い、鞄からフード付きのローブを取り出す。


これなら、街中でも魔族特有の角も隠せるだろう。


「い、良いんですか?」


「構いませんよ。別に貴方の為だけと言うわけでもありませんしね」




そうして、リアにローブを着させる。



リアが着込んだローブは、サイズ感も丁度良く、フードを被れば、角も隠せるだろう。


「適当に持ってきた、ローブがまさか役に立つとは......」



エルミール家は、魔術師の一族ということもあり、屋敷には沢山の魔術師用のローブがあった。


無論、エリシアには無用の長物だったが、今になって一番有効活用できた様だ。



「これなら、街にも入れそうですね。兎も角、先を急ぎましょう。お互いうかうかしていられない立場ですし」


「そう...ですね......」


リアはそう弱々しく、言うとエリシアの手を握ってきた。


顔を見てみると、リアは頬を赤らめていた。



(い、いったいなんでしょうか......? 何故に顔を赤らめて、手を繋いでいるのですかね)



エリシアは思考を巡らせる。



きっと、今まで辛い思いをしてきたのだから、何かしらで安心感を得たいのかも知れない。或いはーー。



(流石に、それは無いですね......)


エリシアは深く気に留める事もなく、先を急ぐことにした。

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[一言] 盗賊の財布から中身を没収しないの?
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