ウェタル市国侵攻-4
エリシアとレーマは屋敷の中へと入る。
屋敷の中は、不気味な程の静かさに包まれていた。
その時だった。
2人の男の叫び声が屋敷中に響き渡った。恐らくは、ヴェルダのものだろうか。
「この声は、そっちの部屋からみたいだな」
レーマは廊下の向こうに指を指す。
「ではその方へ行ってみましょうか」
エリシアとレーマは、その方へと向かう。しかし、その先に人間ほどの大きさの影が幾つか見える。
「あれは一体……」
「人間では無さそうだな。人外の匂いがする」
その影は、此方の存在に気付くと此方へと一気に駆けてくる。
それが完全に人間では無いとエリシアが気づいたのは、そう時間は掛からなかった。
「ニンゲン、まだ生き残っていたか‼︎」
「メスだ。オス肉は不味いからな。舌が唸る‼︎」
それは、リザードマンと呼ばれるモンスターだ。
数にして5体――彼らがこの屋敷を襲撃したモンスターなのだろうか。
エリシアは《鑑定眼》を発動し、リザードマンのステータスを確認する。
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ハイ・リザードマン
個体平均レベル:49
個体平均体力:910
個体平均精神力:670
個体平均魔力:440
個体平均筋力:780
スキル:《再生能力向上》《竜戦士》
ユニークスキル:《上位蜥蜴人》
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ステータスだけで言えば、Sランク冒険者にやや劣る程度だろうか。並の傭兵程度では相手にならないだろう。
「行きますよ。レーマ」
「ああ」
一番槍に突撃してきたリザードマンは、エリシアに手に持っていた剣で斬りかかってくる。
しかし、エリシアはその剣を素手で受け止め、握力で容易く粉砕する。
「な、なぁ⁈」
リザードマンは驚きの声を上げる。
エリシアは手に持っていた剣の破片を、リザードマンに投げつける。
破片はリザードマンの脳天を貫き、命を刈り取る。
エリシアはその勢いで、後方にいたリザードマンを蹴り上げる。
「グオゥ⁈」
凄まじい勢いで吹き飛んだリザードマンは、壁にめり込む。
「車割」
レーマが片腕を指揮者のように振り上げると、残った3体のリザードマンは文字通りバラバラに砕け散った。
「相変わらずこの呪文はえげつないですね……」
エリシアは、目の前に広がるグロテスクな光景に目を背ける。辺りには血と臓物が散乱し、彼女に吐き気を催させた。
「我が主人の魔法はもっと素晴らしいぞ?」
「出来れば見たくは無いんですが……兎に角、先に急ぎましょうか」
リザードマンが向かってきた方向へと向かう。
暫くなりに進むと、半開きの扉から灯りが漏れているのを見つける。
「あの部屋何かいるな。それもかなりの魔力量の持ち主もいる……我に匹敵するかも知れんな」
探知魔法を発動させていたレーマがそう言う。
上位の悪魔に匹敵する存在などそうそう居ない。この部屋の先で待ち構えているのは一体何者なのだろうか。
エリシアは半開きの扉から中を覗く。
そこには2人の見知らぬ男の死体――そしてヴェルダ、ゴーセルの苦痛に歪んだ表情を浮かべた亡骸
。そしてリザードマンとスネークマンと思わしきモンスターの姿があった。
「……何者だ」
その瞬間、リザードマンと視線があった。




