ウェタル市国侵攻-3
ヴェルダの屋敷の門を越えて、敷地内へと入る。
「な、なんなんですか。これは……」
そこに広がっていた光景は、異様なものだった。
屋敷を警護する兵士らしき人物が、首を切り落とされて倒れていた。
「また、惨殺死体……気が滅入る……」
ミスラは再び頭を抱える。
どうやらミスラは死体慣れはしていないようだ。というか、死体に慣れてるエリシア達の方が可笑しいのだが。
「中で何かあったのでしょうね」
これは只事では無いのは確かだ。
戦闘能力が低いミスラとリアを連れて行くのは危険だろう。
「アラス、リアとミスラと一緒にここで待っていてくれませんか? 屋敷の中には私とレーマの2人で行きます」
「ボクは楽しいことから仲間外れー?」とアラストルは不満を漏らす。
「今回くらいは勘弁してください。いざと言う時に頼れるのはアラスだけなんですから」
「うーん。そこまで言われたら頼られてもいんだけどさぁ」
アラストルはどうやら理解してくれたようである。以外とこの悪魔は聞き分けが良いのかも知れない。
「エリシアさん、私も行きます! きっと役に立ちますからっ」
そう言ってエリシアに飛び付いてきたのはリアだ。正直言って、一番聞き分けが悪いのは彼女だったりする。
「困りますよ。何かあったらどうするんですか?」
「その時はエリシアさんが助けてくれます。エリシアさんが怪我したら私が回復させてあげます!」
「私だっていつも守れるわけでは無いんですよ? それに回復魔法はレーマが使えますし」
「エリシアさんが危険な場所に向かうのに、自分はのうのうと安全な所で待ってるなんて妻として出来ませんっ!」
「妻ってなんですか……妻って」
エリシアは困惑しつつもリアを引き剥がそうとする。
「いーやーでーす!」
「まったく、どうしたら言うこと聞いてくれるんですか」
「じゃあキスしてください。キス! 第一、なんで悪魔とはしたのに私とはしてくれないんですか!」
「別に、それくらいなら……」
エリシアは、そっとリアの唇に自身の唇を合わせる。
「ふひいゃ⁉︎」
リアは、突然の出来事に飛び上がる。
「これで言うこと聞いてくれますよね。そもそも自分からしてくれって言ったのに驚き過ぎじゃないですか?」
「いや、その……無理言ったつもりだったんです……してくれはしないだろうなって……その、はい……」
そう言い、リアは頬を赤らめる。
「でも約束は約束です。ここで大人しくしてくださいね」
「はい……大人しくしてます」
急に物分かりが良くなったリアを見て、エリシアは胸を撫で下ろした。
(リアは本当に何処にもついてきますからね。まったく……)
特にこれから向かうのは室内で、守りながら戦うとなると厳しいものがある。
「行きましょうか。レーマ」
「そうだな。我が居る限り、幾ら傷を負っても構わぬぞ?」
「なるべく怪我しないようにしますが、その時はお願いしますね」
エリシアとレーマは屋敷の中へと向かっていった。
 




