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愚者の議会ー2



顔面を円卓にめり込まされたヴェルダは数度痙攣すると動かなくなってしまう。



「き、貴様! これは重罪だぞ⁈ 他国の、それも異種族の平民如きが貴族にこんな仕打ちをするなどっ!」



そう声を荒げたのはウェタル市国の領土の二割を統括する貴族である、ゴーセル・カウマンという男だ。



「五月蝿いですね。私は平民じゃなくて帝国子爵ですよ。大国の貴族と小国の貴族……どっちが偉いかわかると思いますが?」



それを聞いた男は驚きからか目を丸くする。


しかし、男の表情はすぐに平常な物へと戻っていった。目の前の小娘がかの大国の貴族のわけがないと判断したのだろう。



「調子のいい嘘をつきおって!」


「嘘じゃ無いですよ。証拠だってありますし」



エリシアはそう言い、懐からエストリア帝貴族である事を証明する勲章を取り出す。一応役に立つと思い懐に忍ばせていたものだ。



「お前は、本当にエストリア帝国の……し、しかし関係無い! 此処はウェタル市国だ。偉いのはウェタル市国の貴族なんだ!」



ゴーセルは開き直ったのか、なんの恥ずかしげもなくそう宣言した。


彼の言うことにも一理あるが、エリシアはそれ以上に彼等が気に食わない。



「この無礼者めっ!」


「私の友人――いいえ、この際家族とも等しい人に怪我させたんです。このくらいは当然の結果です」



顔面をめり込ませたヴェルダはピクピクと身体を動かす。どうやら息はしているようだ。



「私の事を家族だなんて……気が早いですよエリシアさんっ」



その背後では、何故かリアが恥ずかしがっていた。


彼女は家族の意味を何か履き違えているのでは無いだろうか。エリシアはあくまで姉妹的なニュアンスで言ったのだが。



「本当に申し訳ないわ、後は私が話をつけとくから帰って大丈夫よ」



ミスラは肩を落とし、申し訳なさそうにそう言った。



「そうですね。私達は部屋に帰らせてもらいます……行きましょうか」



エリシアはリアの方へと振り向くと、コクリと首を振った。レーマやアラストル達も文句はない様子だ。



「ふざけるな、逃げる気か⁈ 処刑だ。処刑にしてやる!」



部屋から退出しようとしたエリシアを見て、ゴーセルは怒鳴り散らした。だか、エリシア達は聞く耳すら持たず部屋を早々に立ち去った。


議会室からは、ゴーセルや他数名の罵声やら何やらが聞き漏れてくる。


ミスラも相当大変だろう。





✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎





「まさかエリシアがあんな事するなんて思わなかったよねー」



アラストルは呑気そうな声色でそう言った。聴き慣れたいつもの物だ。



「流石にあれは頭に来ましたので、つい……」


「私の事を思ってしてくれたんですね!」リアはそう言うと、エリシアに抱きついてくる。


これもまた慣れた事、と言えば慣れた事なのだろうか。



「失礼な奴等だし、放っておいて帰っても良いのではないか?」



レーマはエリシアに問いかける。



「確かにそうですけど、雇い主はミスラですしね……気が乗りませんがちゃんとやりますよ」



この国を助ける――と言うと気は乗らないが、ミスラの為と考えれば良いだろう。



「それにしても疲れましたね。今日はもう寝ましょうか」


「ですね。今日は何かと疲れました」



リアはそう言い、大きな溜息を吐いた。



「明日は折角ですし、町に行ってみませんか?」



折角こんな遠出してきたのだ。ウェタル市国の町並みを見て回るのもいいかも知れない。



「ボクもこの辺りは来た事ないし、行ってみたいかなー」



アラストルは呑気そうに、そして少しの笑みを含ませて、何処か嬉しそうに言った。


そう言えば、アラストルが契約を結んできた理由が"世界を見てみたい"だったとエリシアは思い出す。



「我は主人の元なら何処へでもついて行くまでだ」


「私もエリシアさんのいるところなら何処でも構いません」



どうやら、反対意見があるものはいないようだ。


ならば、明日は町の方へと行ってみよう。モンスターがいつ襲撃してくるか分からない状況だが、そのくらいは良いだろう。

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