領地を見よう
エリシア達はそのあと、村を回ることにした。
アラストルとレーマは、百年ぶりの再会からなのだろうか、二人で話に耽っていた。
その二人を置いてエリシアとリアは、畑を歩いていた。
小麦が辺り一面に生い茂っており、実りに実っていた。
どうやら、ドラゴンの襲撃にあったわけでもない様で、豊作の様だ。
「旅人さんかね? こんな村に来るとは珍しいな」
そう声をかけて来たのは、初老の農夫だった。
どうやら、新たな領主にエリシアがなった事を知らない、もしくは誰だかわかっていない様子だった。
恐らく後者の方が可能性は高いだろうが。
「えぇ、そうです。たまたまこの村に辿り着きまして……」
「そうかい、そうかい。何もない村だけど、ゆっくりしてってくれよ」
農夫はそう言い、手を振ってその場を立ち去っていく。
別に悪い人ではない様だ。
「これなら、秋には沢山お金が手に入りそうですね」
リアはそう言う。
確かに、これほど豊作ならどれほどの金額になるのだろうか。
国との折半だとしても、軽く金貨百枚は越すだろう。
他にも経営する村は多くあるので、莫大な資金になるはずだ。
「そうですね。秋が楽しみですね」
本当は冒険者になり、稼いでいく予定だったが、もはやその必要もなさそうだ。
領地経営の不労所得で充分に遊んで生きてけるレベルだ。
「エリシアさん、あっちの森気になりません?」
リアはそう言い、村の外れにある奇妙な木々が生い茂る森の方を指さす。
レーマが出てきた森だ。
「魔族には変な匂いがするんじゃありませんでした?」
「まぁ別に嫌な匂いではありませんし……純粋に気になってしまって」
確かに、他では見られない異様な森だ。
木の幹には、渦巻く紋様が無数に浮き出ており、正直言って気持ち悪い。
とは言え、珍しい森には変わりない。
「折角です。行ってみましょうか?」
「ですね。面白そうですしね」
異様な森ではあるが、こんな村の近くにあるのだ。
別にモンスターが潜んでるわけでもないだろう。
仮にモンスターがいても、並大抵の相手ならどうにでもなるし、忘れがちだがリアも魔術師として強い部類なのだ。
こうして二人は森へと向かうことにした。




