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領地へ行こう



翌日――。


エリシア達は、自分の領地であるオオミ村まで足を運んでいた。



目の前に広がるのは、金色の小麦畑が何処までも広がり、雑多な家屋が立ち並ぶ牧歌的な風景だ。



「にしても、良い景色だねぇ……こう言うのに限って壊したくなっちゃうよねー」


「駄目ですよ、私の領地なんですから。と言うか私の領地じゃなくても辞めてください」


「ただの冗談だよー?」



アラストルはそう言うも、本当にやりそうなので、冗談に聞こえない。



「あそこの森、不思議な匂いがします……」



リアはそう言い、村の外れにある森林に指を指す。


確かに、見たこともない木が生えている森だ。


とは言え、何か匂って来るわけでもない。やはり人間の鼻では感知することができないのだろう。 

 


「ボクの眷属はあの森の中にいるみたいだねー」


「そう言えば、なんでそんな事がわかるんですか?」


「契約者の居場所はわかるものだよー。勿論エリシアの場所もね?」


「なんか嫌ですね……それって私はアラスから逃げれないってことじゃないですか」

 

「まぁね。でもその逆も然りだよー」



アラストルは、そう言い微笑を浮かべた。




その時だった。


今まで快晴だった天候が、突然雲が現れ空を覆い尽くした。



「急に曇りましたね……」


「ですね。なんでしょうか」



エリシアとリアは辺りを見渡す。


辺りは文字通り、雲一つなかった。それなのに、ものの数秒でこんなに曇るのは異常だ。



「どうやら起きてたみたいだねー。いや、ボクが近づいたからかな」



アラストルは、そうぽつりと呟いた。



「アラス? もしかして、また変なことしたんですか……」


「違うよー、ボクの眷属が勝手に目を覚ましちゃったみたいなんだよ。これはボクのせいじゃないよ?」


「まぁ、良いですが……どうせ、アラストルよりは問題児じゃないと思いますし」



エリシアが森の辺りに注視していると、森の中から、褐色肌の緑髪の女悪魔――レーマが姿を現した。



「意外と早く見つかったな……にしても見るからに弱そうな人間どもだ」



レーマはエリシア達を見つけ、狂気的な笑みを浮かべる。



「あの人がアラスの眷属ですよね?」


「うーん、そうだよー。たしかー、レーマだっけ? 懐かしい様な……そうでもない様な?」



そんなエリシア達を横目に、レーマは無数の魔法陣を展開する。



「なんかあの人戦闘態勢とってません?」


「おかしいな。ボクのこと忘れてるのかな?」



アラストルは呑気そうにそう言う。


アラストルもレーマの事もよく覚えていない様だったし、お互い百年も関わりもないと顔を忘れてしまうのかもしれない。



「仕方ないですね。私が黙らせて来ますよ……」


「エリシアの実力なら、余裕で倒せると思うよー」



エリシアはそう言い《鑑定眼》を発動する。





  ーーーーーーーーーーーーーーーー


  上位悪魔 レーマ


  レベル:80

  体力:920

  精神力:600

  魔力:4900

  筋力:1200

  スキル:《魔法の極み》《天候操作》

  ユニークスキル:《大悪魔》


  ーーーーーーーーーーーーーーーー





上位悪魔と言うだけあってかなり強い部類の様だ。


単純な魔力量ならミリスにも匹敵するし、他のステータスもその辺のSランク冒険者より上だ。



そのはずなのだが、エリシアの周りが強すぎて、弱く感じてしまう。


ウェレスならそこまで苦戦せずとも倒せる相手だろう。



「矮小な人間よ……喜ぶが良い。この大悪魔レーマの餌食となれるのだ。存分に感謝するが良いさ」



レーマはそう言いうと、無数の魔法陣が数多に輝く。



「七元素を司るこの魔法の局地を死に際にみっ……」



その時だった。


大悪魔が認知できない速度で、接近したエリシアの拳がレーマの腹部に命中する。



「いぎぁ⁈」



レーマは凄まじい衝撃で、地面に叩きつけられ身体の半分程が地面にめり込んだ。



「やってしまいました……力は弱めたつもりなのですが」


「まぁ死にはしないだろうねぇー。悪魔だし」



アラストルとエリシアは、めり込み倒れ込むレーマに近寄る。


ちなみにリアは「悪魔は何をするか分からない。弱い自分は遠くで見てる」という理由で、離れたところでその光景を見ていた。



「嘘だろ……また負けたのか。自由になったばかりなのに……」



レーマはよろけながら立ち上がる。


どうやら、人間にあっさり負けた事がショックだったのか顔面が蒼白だった。



「我は無能だ。我が主人より命じられた事もまともに出来ないとは…はぁ……死にてぇ」



レーマは予想以上にショックを受けている様だ。何か病み出した。



「悪魔ってこんなのばっかなんですか……?」


「んなわけないでしょー。たしか、昔からそういう所あった奴だったし、気にしなくても良いよー」



どうやら、悪魔は全員あんな感じではないみたいだ。



「人間よ。我を殺すが良い……矮小な存在に一度だけではなくニ度も敗北するとは、悪魔として最低だ……もう殺せ」


「別に殺しはしませんが……」


「ならば、不平等な契約を結び飼い殺すつもりか⁈ この悪魔め……!」


「貴方がそれ言います?」



どうやら、この悪魔は被害妄想が酷い様だ。


と言うか面倒くさい、本当に面倒くさい。



「ねね。ボクが誰だか覚えてる?」



その時、アラストルがレーマに問いかける。



「お前は誰……ん…あれ?」



レーマはアラストルにやっと気づいた様だ。



「我が主人⁈ すみません。お姿が余りにも変わられてて……」



レーマは片膝を大地につける。



「申し訳ありません。人間如きに負けるとは、一生の恥…この命で……」


「別に良いよ。ボクと契約結ぶくらいこの人間強いしねー」


「はえ? 我が主人が人間と契約?」



レーマはキョトンとして、驚愕している様だった。


やはり、アラストルと人間が契約するなど相当イレギュラーな出来事なのだろう。



「それに今は、人間に攻撃するつもりないからねー。人間とも仲良くだよー」


「わ、わかりました。人間とも仲良くですか……にしても、貴方は一体何者なんだ? 我が主人と契約を結ぶとは」



レーマはそう言い、エリシアの方へと視線を向ける。



「ただの人間ですよ。多分ですが」


「まさかここまで強い人間がいるとは……我も想像した事なかったな」



思い返してみると、ほんの少し前まで自分は無力な存在に過ぎなかったのだ。


それがたった一つのスキルを獲得して、ここまで変わったのだ。


正直自分でも、何がなんなのか理解できていない節がある。



「それでエリシア、レーマも家に連れてって良いよねー」


「復活してしまったものは仕方ありませんね。アラスが面倒見るなら良いですよ? 部屋数もまだありますし」



この際だ。復活しなければ放置するつもりだったが、復活してしまっていたなら仕方がない。


兎も角、喜ぶべきか悲しむべきかまた新しい仲間が加わったのだった。

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