上位悪魔復活
エストリア帝国の帝都――バル・アレの郊外にあるオオミ村。
この村は、エリシアの領地に組み込まれた幾つかの村の一つだ。
そんなオオミ村の外れには、"正直者の森"と呼ばれる、中に入ると本人の真意が漏れ出してしまうと言う変わった森がある。
その摩訶不思議な森の中心には、古びた祭壇があった。
長年放置されていた様で、苔で覆われていた。
これは、アラストルの第一の眷属にして上位の悪魔である"レーマ"の封印の地だ。
百年前の災厄で、多くの魔術師達がこの悪魔を打倒するため、命を落とした。
しかし、彼等の刃はレーマには及ばず、封印するので手一杯だったのだ。
そうしてこの封印の地は、百年の時を経て殆どの人物に忘れ去られてしまっていた。
しかし、アラストルがこの世界に顕現した事により、封印が弱まり今に解放されようとした。
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祭壇は突如としてヒビが入り、粉々に砕け散った。
弾け飛んだ祭壇の中心に、人影の様なものが見える。
そこにいたのは褐色の肌で、緑色の髪の持ち主の美女だった。
その活力のない紫の瞳は、背筋が凍る様な悪寒を感じさせる。
「我とした事が、人間如きに封印されるとはな……」
レーマは辺りを見渡す。
どうやら、百年前と変わらずここは森のままの様だ。
兎も角、自分が封印を打ち破り復活したと言うことは、彼女の主人であるアラストルが再びこの地に顕現した証だ。
ならば、やる事は百年前と変わらない。
「我が主人が、この世界に来たと言うことは目的は変わらないはずだろうな……」
レーマはそう言い、狂気的な笑みを浮かべる。
ならば、やる事は百年前と変わらない。人間達に対する虐殺だ。
前回は人間達に封印されてしまったが、今回はこの様なヘマは犯さない。
「我が主人よ! 今度こそは大悪魔レーマの名に賭けて、尽くしましょうぞっ」
森の中でただ一人、レーマの声が響き渡った。




