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帝国の最高戦力



エストリア帝国史上初の女帝にして、同国の最高戦力。


それが、ウェレス・エレ・ヴァルアード=エストリアその人だ。



父である先代皇帝。リヴァン龍公国から嫁いできた竜人族系貴族の母との間に生まれた娘だ。


人間と竜人の血が奇跡的な確率で混ざり合った彼女は、規格外の強さを持って生まれてきた。


世界有数の人口を誇る帝国でもウェレスに勝てる逸材は居ない筈だ。



それだけではなく、政治能力の高さや戦術の才能すらも持って生まれてきたのだ。


まさに国を治める為に生まれてきた様な存在だ。




しかし、そんな彼女も本来は皇帝になれるはずではなかった。



女、それも異種族との子供が、皇帝に成れるわけが無い。


『もしせめてウェレスが男だったら……』そんな陰口を言われたこともある。



しかし、現にウェレスは女帝という座についている。


というのも、それは二十年前に彼女がクーデーターを起こしたからだ。




親兄弟を殺し、自分以外の血筋を断ち。反対勢力を全て根絶やしてーー彼女の為に、数万の命が流れた。


そうした死体の山の上にウェレスは立っている。


 


しかし、彼女は後悔はしていない。


自らの手で殺めてしまった父や母、兄弟のことは今でも思い出す。


それでも、そこまでしなければ国を治める座は手に入れられなかった。

 


だからこそ、この国をなんとしても守り抜きたい。ウェレスはそう強く思っている。




だからこそ目の前にいるエリシアを身をもって試さなければ行けない。



すぐそこまで迫った災厄を防ぐ為。




 



「それでは行くぞ?」



ウェレスは数秒間の間、古い記憶の感情に浸ったあとに、翼で風を煽る。



煽られた風は刃の形を得て、エリシアに真っ直ぐ飛んでいく。


圧縮された空気のはずなのに、それが揺めき目視することができた。




エリシアは咄嗟にそれを回避する。


背後にあった壁に当たり爆音をあげる。石造りの壁が崩れ去る。



「"風竜の吐息"ですか?」


「よく知っておるな。こんな魔法、普通は知らんだろうに……」



風竜の吐息――昔読んだ本で見たことがあった。


ドラゴンの固有能力を魔法化した竜魔法と言うものだ。


竜人の血が流れている者しか使えない魔法で、それ故にそんなに知名度は高くはないだろう。






「これはどうじゃ?」



ウェレスが次に手を掲げると、魔法陣が展開される。


そこから、竜の口腔から放たれる火炎放射の様な――と言うよりはそのものだろう。



エリシアを焼き払おうと、火炎放射の照準を合わせる。


しかし、エリシアはそれを素早く回避し続ける。



「あ、危ないじゃないですか! 火は流石に死にますよ⁈」


「死にはせんよ。見た目はあれだが、火加減はしておる。当たっても火傷はしない筈じゃ」



そう言っては居るが、外見は炎そのものだ。


しかし、辺りに引火していない点から実際そこまで熱くないのかもしれない。





「此処は危ないから、遠くで終わるのを待とう」


「そうだな。あれに巻き込まれたくはねぇな」


「ですね。後はエリシアさんに任せておきます」



レイスとリア、そしてリハクは命の危険を感じたのだろう。


急いでこの場から脱走した。


よく見てみれば、ウェレスの両脇にいた騎士達の姿もなく、既に脱出したのだろう。



「お主は聖女だそうだな。ならば魔法を唱える暇は与えぬまでじゃ」



ウェレスはそう言うと、エリシアの身体を掴み、頭上に思いっきり投げ飛ばす。



「ひいゃ⁈」



エリシアは情けない声をあげ、上に吹き飛ばされる。


天井に敷き詰められたガラスを突き破り、宙高くに放り出される。



相当高く投げ出された様で、真下を見れば巨大な帝城がしっかりと全体を見れた。


エリシアは空中で体勢を立て直し、目に写った小高い塔に着地する。



「反撃はせぬのか? 魔法を早く使えば良かろう……」



塔の真正面には、翼を展開し空を飛ぶウェレスの姿があった。


ウェレスはそう言うと、手の中で再生した火炎を塔の根元へと打ち出す。



それが当たった瞬間、爆音をあげ塔の根元が完全に吹き飛ぶ。


それに伴い塔は一瞬で傾き、瓦礫の山が形成される。



「人の事殺す勢いじゃないですか⁈」



エリシアは勢いよく塔から飛び降りる。


普通の人間だったら骨折では済まないだろう。


普通は、ぐちゃぐちゃになってる筈だ。



「そんな事はないぞ? 瓦礫に押し潰されそうになったらその前に助け出したし、放り投げた時も地面に激突する前に救出するつもりだったしな」



ウェレスはそう言う。


ウェレスほどの能力値があればそう言うことはできるものなのだろう。



「そうですね。私も本気を出させてもらいますよ?」


「構わぬ。殺す気でこい、どんな攻撃も受け止めやろう」



エリシアは地面を蹴り上げ、急速にウェレスの元に駆け寄る。



その瞬間、音速を超えソニックブームが起こる。


轟くような大音響と衝撃波により、辺りに漂っていた塵や埃が吹き飛ぶ。



「な...っ...…⁈」



エリシアを魔導師だと思っていたのだろう。


接近戦を仕掛けてくるなど想定もしていなかった様で、酷く動揺していた。



「お望み通り本気の一撃ですよ」



エリシアは本気の拳をウェレスに振り下ろす。


彼女は《即死耐性》を保有しているので、どんな強力な一撃でも耐えられる筈だ。



ならば、本気を出してもいいだろう。


エリシアはそう考え、一切妥協のない本気の拳をくり出した。

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