女帝との謁見ー3
「それで、お主しがエリシアか?」
ウェレスはエリシアに視線を向けてくる。
「お初にお目にかかります。陛下……」
自分も片膝を床につけた方がいいと判断し、見様見真似でレイスの様に片膝をつける。
エリシアは貴族ではあるが、まともな貴族的教育は受けていない。
その為こう言うことに関しては無知だ。
それを見ていたリアも片足を床につけた。
やはり魔族と人間では礼儀作法がかなり違うのだろう。
あたふたとしていた。
「別に足をつけなくても良い。お主らは救国の英雄ぞ? それを地伏せさせたとなると妾の面目も立たん」
「は、はい。そうでしょうか……?」
別に彼女は大国の女帝であるし、面目が立たないことはないと思うが、それも彼女の価値観上の話なのだろう。
「にしても助かった。妾がドラゴン討伐に迎えればよかったのだが、いかんせん周りが許してくれなくての」
ウェレスはそう言い、視線をレイスに向ける。
「それは当たり前です。陛下以外に皇族の血筋は絶たれております。世継ぎもおられませんし、危険に晒すわけには行きません」
「妾より弱い奴がよく言うの。農耕地帯が焼かれたら、国体そのものが危なかろうに」
「それは関係ありません。立場を考えてください」
「相変わらずレイスは硬いな」
ウェレスはそう言うと笑みを浮かべる。
別に彼女はレイスを鬱陶しく思っているわけでもない様だ。
一つ気になる点といえば、レイスは自分より弱いと発言していた所だろう。
エリシアはウェレスのステータスを鑑定する。
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ウェレス・エレ・ヴァルアード=エストリア 41歳
レベル:75
体力:2700
精神力:1250
魔力:3200
筋力:2820
スキル:《竜化》《即死耐性》
ユニークスキル:《皇帝》
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確かにウェレスはかなり強い。
今まで見てきたステータスの中でもアラストルに次いで高い数値だ。
それにスキル《竜化》も気になる。
しかも年齢が41歳のはずなのに、外見年齢は十代程度で非常に若々しい。
やはり人間以外の長命な種族の血が混ざっているのだろう。身体的特徴から判断するに竜人族辺りのはずだ。
「話が逸れてしまったな。妾がお主を呼んだ理由は二つある」
「二つですか......」
「一つ目はドラゴン討伐の謝礼じゃな。そして二つ目は妾と決闘してほしい」
「決闘……?」
「そうじゃ。帝国最強のこの妾とお主ーーどちらが強いか心底気になる」
ウェレスはそう言うと、玉座からゆっくりと腰を上げる。
「勿論手加減は不要ぞ?」
「しかし......」
もしも怪我をさせてしまっては大ごとになる。
なんせ相手は大国の長で、他にいない唯一の皇族の血筋だ。
それに、もしものことがあっては困る。
「陛下、いけません。もしものことがあっては困りますっ!」
声を荒げたのは、レイスだった。
いきなり何を言い出したのかと、焦っている様子だった。
「レイス……心配は要らぬ。妾には《即死耐性》がある。もしもなどはない……それに妾も節度ある人間だ。相手を殺す様なこともありはせん」
「で、ですが……」
レイスは言葉をつまらす。
「と言うわけだ。心置きなく楽しもうぞ!」
ウェレスは、腰から生えたドラゴンに似た翼を広げる。
「もしかして此処でやるつもりですか⁈」
「嗚呼、備品はいくらでも壊して構わん……皇帝の妾が言っているのだ。心配はするな」
ウェレスは翼をはためかせ、戦闘態勢に入った。
「噂通り自由奔放なお方ですね……」
エリシアは思わず呟いてしまった。兎に角、この人は破茶滅茶すぎる。
「生まれ持ってそう言う人格なのだ。こればかりは仕方あるまい?」
ウェレスはそう言うと、微笑を浮かべた。




