女帝との謁見
朝食を食べ終わったからだろう。
扉をノックする音が響き渡る。
「誰かお客さんみたいだねー」
「そう見たいですね。少し見てきます」
エリシアはそう言い、玄関に向かった。
玄関の扉を開けるとそこにはリハクの姿があった。
随分と走り回ったのだろうか。息も絶え絶えで、汗もかいていた。
「何で私の家を? 教えていないはずですが......にしても大分疲れている様子ですけど」
「嗚呼、商業ギルドに聞き出してきたんだよ......急ぎの重大な用事だ......」
ギルドマスターであるリハクが、こんなにも焦ってエリシアを探し出す理由ーーロクなことが思いつかない。
「もしかして、面倒ごとですか?」
「まぁ、めんどうごとだな......」
「それでそれは一体何ですか?」
「皇帝陛下がエリシアとの謁見を望んでいらっしゃるんだ。それも急ぎでとーー」
エストリア帝国の皇帝は女性らしく、所謂女帝らしい。
相当頭の切れる人物らしく、百年に一度の天才と言われているのはカルミア王国でも有名な話だ。
しかし、自由奔放な性格なそうで、更には相当な気分屋であるそうだ。
聞いただけでも、面倒くさそうな人物だ。正直言えば会いたくない。
リハクの話を聞いたところ、昨日にエリシアの報告を皇帝陛下に求められ、帝城に向かったそうだ。
その時に、エリシアをすぐに連れてくるように命じされたそうだ。
当然、国の最高位に逆らえる訳なく、エリシアを探し回っていたと言う訳だ。
「そう言う訳だ、馬車を用意してある。すぐに行こう」
「これって拒否権はあります?」
「ないな。陛下直々の命令だからなとは言え……とは言え、悪事を働いたから呼び出されるわけでもない。あくまでエリシアの功績を讃えたいそうだ」
とは言うものの余り気が乗らない。
仮想敵国であるカルミア王国の大貴族と知れれば、何が起こるか予想もつかない。
できるならこの生活はずっと続けていきたい。
とは言え、行かないわけにも行かないのが現状だ。
「わかりました。行かなければいけないのでしょう」
「嗚呼、そうだ。物分かりが早くて助かる」
エリシアはそう言い、馬車に乗るように催促される。
「リアはどうします?」
「彼女も連れてきてくれ。陛下はドラゴン達を討伐した者たちを連れてくるようにと言っていたしな」
そうして、急いで身支度を終わらせて馬車に乗り込むことにした。
「アラスは本当にいいですよね。何も面倒なことがなくて、私も今日はゆっくりしたかったですよ......」
「仕方ないねー。部屋の掃除くらいはしとくよ。それに三日くらいならエリシアと離れても平気だしねー」
悪魔は本来契約者と離れられないが、アラストルクラスになると三日程度なら平気なようだ。
アラストルはそう言ってエリシアを見送るのだった。




