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いつかの記憶



  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



辺りには何も見当たらない。


真っ白な空間。


これは夢なのだろうか。



「姉様、次に目を覚ましたらしっかり逃げて」



自分にそう言ったのは、妹のミリスだった。


ありえない。ミリスにそんな風に呼ばれたことなどは無い。



「今更都合が良いのはわかってる。許されなくても良い...それでも私は......」



     何を言ってるのだろうかーー変な夢だ。少なくとも妹はこんな事絶対言わない。



「愛しているわ。姉様......」



そう言いミリスの皮を被ったソレはエリシアに抱きついてくる。


 

 

     ミリスはこんな事は言わない。


    あり得ない。あいつがこんな事を口走るなど気持ち悪い。



「......次は絶対に私達から逃げてね」



ミリスの姿をしたそれは、そう微笑みかけてくる。


一体貴方は誰?そう問いかけようとしても声が出ないし、身体も動かない。


まるで一度見たものを再生して見ている気分だ。




だんだんと意識が覚醒してきたのだろう。


辺りの空間が歪み崩れ、意識が浮上する。





  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







再び目を覚ますと、まだ見慣れない天井が目に映り込んだ。


昨日買ったばかりの自宅のものだ。



「夢......?」



それにしても、夢見は最悪だった。


ミリスがあんな事言うわけがない。あれの腹黒さは自分が一番知ってるはずだ。


それにしても、なぜこんな夢を見たのか。



「むぅ...エリシアさん......」



ふと隣を見てみると、リアがすやすやと眠っていた。


野宿をしている時も、良く隣でくっついて眠っていた。


しかし、こんな狭いソファにまで潜り込んでくるのは予想外だった。



「変な夢を見たのは、これのせいでしょうかね......」



狭いところに、ぎゅうぎゅう詰めで寝ていたせいか身体中が痛い。


こんなところで寝ては、しっかりとした睡眠も取れないはずだ。


そのせいで変な夢を見たのかもしれない。



「にしても大変だったみたいだねー」



そう声をかけてきたのは、アラストルだった。


昨日から見掛けないと思っていたが、どうやら寝ているうちにこっそり帰ってきたようだ。



「昨日は貴方のせいで大変だったんですが?」


「ごめんねー。でもさ、ボクがこの魔法使いましたーって言っても、それはそれで面倒だよ? ボクの正体バレるかもだし」


「だったら最初から使わないでくださいっ!」



この悪魔全く反省の色がないどころか、悪気すら感じられないーー悪魔が悪気や反省しているのも違和感があるが。



「まぁ料理作っといたから食べたら良いよ。せめてもの謝罪の気持ちだと思ってね?」



アラストルはそう言うと、テーブルの方へと指を指す。


そこには色とりどりの料理が並べられていた。朝食とは思えないほど豪勢で、どれも美味しそうな出来栄えだ。



「悪魔って料理するんですか」


「普通はしないだろうねぇ。でもボクは長年生きてて暇なんだよ。だからどうでも良い事も暇潰しで覚えてるってわけ」



確かにアラストルは、七大罪に数えられる悪魔の一体だ。


数千年、或いは数億年単位で生きているはずだ。


人生暇になったら、悪魔だろうが何でもしてみるものなのだろう。



「そうですね。リアも起こして朝ご飯にしましょうか......」



エリシアはリアの肩を揺さぶる。


そうすると、程なくしてリアが目を覚ます。



「おはようございます、エリシアさん。よく眠れました......」


「朝食にしましょう」



昨日はリアのせいで変な夢を見たーーそう言いかかったが、それもそれで説明が面倒くさそうだ。



「こんなに豪華な朝ご飯...いったい誰が?」



テーブルに並べられた料理は、野菜料理から魚料理ーー味付けは辛いものから甘いものまで、とてもじゃないが朝食には見えないだろう。



「アラスですよ。寝てる間に作ってくれたみたいです」


「悪魔さん料理作れたんですか?」


「ボクの料理に文句あるなら食べなくても良いよ」


「いえ、ありませんよ。とても美味しそうです」

ここに来てからだろうか。


ほんの少しだけ、二人の衝突が和らいだような気もしないでもない。


どうせならこのまま仲良くなってくれないものだろうか。





三人は席に着く。


最初に料理を口にしたのエリシアだった。


野菜がたっぷりと入ったスープを口に含む。



「美味しい......こんなの食べたことがない」


「本当です。こんなの一流の料理人レベルですよ」



野菜の甘味と肉の風味、それが微かな塩味と絡まり合う絶品のスープだ。


他の料理も同様で、焼き加減から煮込み方、味付けがどれも完璧だった。



「そりゃそうだよー。だって優秀な料理人の頭を......食事中に言うのはよくなかったねぇ」



アラストルは一瞬恐ろしいことを言い放とうとしたが、気にしない方がいいだろう。




兎も角、エリシアとリアは豪勢な朝食を楽しんだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] もしかしてエリシアが過去に戻れたのって、ミリスが⁉︎ そしてアラスよ、料理人の頭はどこへ?
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