衝撃
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エストリア帝国の隣する宗教国家ーー神聖七勇教国。
八人の最高位神官達により統治されるこの国は、現在エストリア帝国と戦争を行なっている。
と言うのも、七勇教では魔族は関わることさえ許されない汚され存在だ。
魔族と友好的なエストリア帝国を以前から敵視しており、それが戦争へと繋がったのだ。
「ありえんな......」
七勇教国の中枢である、聖都にある大聖堂の執務室。そこにいた神官の若い男が呟いた。
彼は八人の最高位神官の一人で、軍事に対する統括権を持つクサアス・アル・カサエムという男だ。
彼は部下より渡された報告書を見て、唖然としていた。
と言うのも、エストリア帝国領に送り込んだドラゴンの群れが殲滅されたと言うのだ。
それも異常な手段で。
「間違いはありません。帝国に潜入していた魔導士から詳細な連絡がありました」
報告書を読む限りだと、村を殲滅中だったドラゴンの大群が、未知の神話級魔法により消滅したそうだ。
「ありえない。ドラゴンに対抗できる兵力は帝都にはない筈......」
作戦は完璧だった。
Sランク冒険者やそれに準ずるものが帝都付近に居ないのを入念に確認し実行した筈だ。
帝都周辺の農業地帯を焼き払い、食料自給率に打撃を与える作戦が、早くにも失敗に終わってしまった。
近郊農業に頼っている帝都には、致命傷のになる筈だったーーしかしそれもこのザマだ。
「しかし、まずいな......このままでは、戦争は長期化するだろうな」
神聖七勇教国は、圧倒的な魔法戦力を有している。
魔法技術の遅れているエストリア帝国相手の戦争は、直ぐに終わると思われていた。
しかし、圧倒的な人海戦術により戦線は膠着。ーーそれどころか、押し返されているのが現状だ。
少なくとも、このままで行けば帝国有利の講和条約を結ぶ羽目になるだろう。
更には帝国の同盟国である、リヴァン龍公国やそして忌むべき魔国連邦が参戦したら、無条件降伏すらあり得る。
「帝国には神話級魔道士はいたか?」
「いません。魔法の最先端である我が国ですら、神話級魔法を使える魔道士は存在してません」
「ならば帝国の部外者か......転移者でも呼び出したか」
転移者ーー大規模な召喚魔法で異世界から呼び出した者たちの総称だ。
彼らは皆揃って、強力な加護を授かって召喚される。
彼らならば、神話級魔法を使えるかもしれない。
「兎も角、更なる調査をすべきだな」
クサアスはこれから来るだろう大仕事に、身体を備えさせることにした。




