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悪魔使いの誤算



スフェルがそう命じると、アラストルの身体から火炎が噴き上がる。



「アウゥゥ‼︎」



アラストルは苦痛からか喜びからか分からないが、唸り声を上げた。



「言う事聞いてくださいよ......」



スフェルは強く願った。


《憤怒》は戦闘能力を倍に引き上げ、スキルの強化をすることができる。


スキルの強化は《処刑人》の一人の動きしか止められない、というの制約を取り払い。複数を対象にすることが出来る。


更に《憤怒》を応用すれば、他人の行動を操ったり、火炎系の魔法の行使ができるなど複合スキルでもある。



しかし、これを使うとスフェルの制御下から完全に解放される可能性がある。


今でさえ制御は不安定な状況だ。


だが、このままでは仮想空間は消え去り、その先で目の前の怪力女に殺されるのがオチだ。





    ーーつまり、やるしか無いのだ。



「さぁ、やりなさい!」



スフェルはアラストルに命令するが、その場に立ち尽くすばかりで、動く気配はない。



「何しているんですか⁈ 早く私の命令を......」


「オオッォォ‼︎」



次の瞬間、アラストルは剛腕を振り下ろした。



だが、その拳の行先はエリシア達ではなく、スフェル自身にだったーー。



「いゃ......⁈」



スフェルは情けない断末魔をあげて、潰れたトマトの様な姿に変わり果てる。



「アオォォ......」



アラストルは悦びに呻き声を上げた。


その瞳には光が灯っており、スフェルの支配下から脱っし、完全な自由意志になった事を示していた。



次の瞬間、スフェルは復活する。



「......あ、熱いいぃぃぃ‼︎」



だが、スフェルを休ませる事なく、身体中が突然発火する。


全身を焼け焦がす様な、激痛にスフェルは悶え苦しむ。


スフェルが、身体を焼かれる恐怖と痛みを充分に味わった後、アラストルの拳が脳天に振り下ろされる。




勿論、それだけでは終わらない。スフェルはこの空間内では永久に復活する。



無傷で復活したスフェルは、再び《憤怒》の能力で身体を焼かれ、潰されるーー。


それが延々と繰り返されるのだ。





「一体どうしたんですか? あれ...」



エリシアとリアは、スフェルがやきつぶされる光景を唖然と見ていた。



「身の丈に合わない存在を召喚するからああなるんですよっ、ざまぁない無いですね!」



リアはその殺戮を見て、感極まっている様子だった。



「あのクソ野郎、人のこと散々痛ぶりやがって......あのまま一生死に続ければいいんですよ!」



リアは邪悪な笑みを浮かべていた。どうやらスフェルには相当鬱憤が溜まっていた様だ。




それから何度スフェルは死んだだろうかーー。エリシアはその殺戮の光景をずっと見つめていた。


短い様な、長い様な時間も終わりを告げる。




あたりの空間にヒビが入る。


そのヒビの亀裂はどんどんと大きくなっていき、それに合わせて意識も遠のいていった。





✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎





意識が戻ると、そこは人気の無い路地裏だった。


路地裏の先には、賑やかな市場が広がっているのが見える。アル=ミサドである事は間違い無いだろう。



「ひ、ひぃ...た、助けて......」



横に目を向けてみると、憔悴し怯えた様子で、身体を縮こめていたスフェルの姿があった。


身体を燃やされ、何度も潰され続けるという経験は相当堪えたようだ。



「なんか、可哀想と言えば可哀想ですね......」


「そんな事ないです。最も苦しんで欲しいですんけど」



やはり、リアはこの男を相当恨んでいる様だ。


「指を全部切り落としましょう」や「生きたまま焼き直しましょう」などと小言を言ってくる。



「リアの気持ちもわかりますが、変な事で時間を使ってる暇も無いですし、一瞬で終わらせますよ」



エリシアは、トドメを刺そうとスフェルの元へと近づく。


しかし、当の本人は錯乱状態でエリシアの姿など見えていない様だった。




「勝手に殺しちゃだめだよー。一番憤怒しているのはボクなんだからね」



その時だった。エリシアの眼前に召喚陣が現れ、そこから一人の少女? らしき人物が姿を現した。  



少女は赤髪の持ち主で、黒衣に身を包んでおり、容姿は極めて淡麗。


吸い込まれそうになる紅色の瞳は、見ているだけで根源的な恐怖が煽られる。一言で現すなら、人外の美貌だ。



「悪魔を弄んだらどうなるか、教育してあげるねー。ニンゲンさん?」



少女は片腕で、スフェルを持ち上げる。



「人の事を散々使い潰しといて、それもこのボクを。許せないよねぇ、死ねると思わないでね」


「あ...ああ......やめてください」



スフェルは虚ろな表情で、じたばたと暴れる。しかし、その少女には意味をなさない。



「少し虐めたくらいでー、堪えすぎだよねぇ。そんなんじゃこれから大変だよ」



スフェルの足元に、底の見えない深淵の穴が出現する。



「この穴の先は、ボクの故郷なんだよねぇ。所謂地獄ってやつだよ」


「や、やめ...私はそんなところにぃ......」



少女は、スフェルを深淵の中に少しずつ沈めていく。



「ボクねぇ、こんな屈辱初めてだった。ニンゲン風情に身体の自由を奪われてたんだから......本当に、腹立たしいよ」



スフェルは、深淵から這い上がろうとする。だが。無数の下位悪魔の腕が伸び、それを阻止する。



「向こうでしっかり、ボクの友達に可愛がってもらいなよ」


「い、嫌だっ!まだ死に……」



スフェルはそう言い残し、深淵の中へと完全に飲み込まれる。



「あ、貴方は?」



エリシアは、少女に話しかける。会話から正体に予想がついているが。



「ボクは、憤怒の悪魔アラストルだよ。さっきは助かったよ、ありがとね」



憤怒の悪魔 アラストルーーそう名乗った少女は狂気が宿った瞳で、エリシアを見つめた。

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