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再戦の竜



「貴方達は下がって! 私が食い止める、援軍と合流して!」



シュラは、微かに残っていた兵士達にそう告げる。



「いくらシュラだからって勝てるわけが……!」



1人の兵士が、そう言ってくる。



「なら、貴方達はもっと勝てない。いるだけ邪魔、だから後方と合流して!」


「わ、分かった。す、すまない!」



シュラの発言に渋々納得した、数名の兵士達は後方に飛んでいった。



「ほう、仲間を逃したか」



ドラゴンはそう言い放った。



「お前は私が刺し違えても殺す」


「言ってくれるな。お前の両親だって、それが出来なかったんだがな」


「っ……!?」



此奴は覚えていた。


目の前のドラゴンは10年前、シュラを守りながら戦っていた両親のことを、そして何も出来ずそこで立ち尽くしていた自分のことを。



「だったら話が早い。お前だけは許さないっ!」



シュラはそう言い、剣を抜刀してドラゴンに斬りかかろうとする。



「せっかくの一騎打ちだ、名を名乗れ。我はヴァイドラ……ハイ・ドラゴンのヴァイドラだ」



ヴァイドラと名乗ったドラゴンは、シュラが臨戦態勢に入ったのにも関わらず、特に動く様子はない。


完全にシュラを舐め腐っている。





「お前に名乗る名前なんてあるものかっ!」


「そうか、そうか……面白くない奴め」




しかし、シュラの剣が届く範囲に入った瞬間、ヴァイドラの巨大な鉤爪が振り下ろされてくる。



シュラはそれを、後ろに避け回避する。


シュラの眼前を鉤爪が掠める。少しでも遅れていれば、顔を抉られていただろう。


このドラゴンは、体躯に見合わない俊敏性がある。これを避け続ける自信はとてもじゃないがない。



風斬ウインドスラッシュ!」



シュラが持つ最大火力の攻撃魔法である風斬ウインドスラッシュを放つ。


剣の先から、風の斬撃が放たれ、ヴァイドラの装甲に直撃する。




しかし、鱗を多少削り取った程度で、ダメージは殆ど与えられていない様子だった。



「所詮は、鳥風情……その程度か」



今度はヴァイドラの巨大な鞭のような尻尾が振り下ろされてくる。



「まずいっ!」



シュラはそれを避けようとするが、回避行動より先に竜の尻尾が直撃する。



「うっ!!!?」



シュラの身体に強い衝撃が走り、吹き飛ばされる。


背後にあった壁に激突する。





その瞬間、シュラの身体が一瞬光る。



シュラの保有スキル《不落》が発動した。このスキルは、体力が半分になった時防御力が向上する能力、そして、一撃で体力が全て無くなる様な攻撃を受けた際に、一度だけ体力が全回復すると言う効果がある。



今回は後者の能力が発動した。




「死ぬがよい。すぐに親元へ送ってやろう」



ヴァイドラは、シュラに向かい鉤爪を振り下ろす。



回避アボイド!」




シュラの身体は瞬間的に動きが早まり、ギリギリのところで鉤爪を回避する。


背後にあった壁が、鉤爪の一撃で崩壊し、一部が崩れさった。




ドラゴンの腹下に入り込んだシュラは、鱗の隙間に剣を突き刺す。



剣の先が少しだけ、刺さった。


これでも充分だ。




風斬ウインドスラッシュ!」



風の刃が、柔らかいドラゴンの体内で炸裂する。


鱗の隙間から、血が滴る。だが、これも致命傷にはなり得ないだろう。



「き、貴様まぁ!!!!」



激昂したヴァイドラは、シュラから距離をとり火炎の息を吐く。



灼熱の炎の中に、シュラは身体を包まれる。



普通の人間――いや、それに耐性を持たない生物なら焼け無くなっているだろう。






だが。



炎の中から、無傷のシュラが飛び出してくる。



これは、シュラが装備していたマジックアイテムの指輪の効果だ。


この指輪は、炎に対する完全耐性を与える特級のマジックアイテムだ。


かつての母親の形見で、冒険者時代にエストリア帝国の女帝から貰ったものだと聞かされていた。




「お前も、あの人間と同じか!!」



まさか、火炎の息を耐えるとは思っていなかったのだろう。ヴァイドラはシュラの接近を再び許してしまう。



しかし、風斬ウインドスラッシュはシュラの力量では、2回連続が限界だ。


ならば、別の魔法を使う他ない。



四重斬撃カルテット!」



シュラの剣は、ヴァイドラの鱗を微かに削る。


それから、暫くして鱗に3つの擦り傷ができる。



だめだ、全然効いてない。




ヴァイドラは、鉤爪を振り下ろしてくる。


シュラは回避が間に合わず、片方しかない翼が斬り落とされる。



「うぐっ……!?」



所詮は、片方じゃ飛べない翼だ。手足を失うよりずっといいだろう。


それより、こんな事で怯んでる暇がある相手じゃない。




ヴァイドラは再び鉤爪を振り下ろしてくる。



シュラは、それを咄嗟に剣で防ぐ。



だが衝撃に耐えられず、剣は木の棒の様に、折れてしまう。


鉤爪は、そのままシュラの胸元を貫く。



「うっ!!!?」



不味い。このままでは殺される。



「手こずらせおって、このまま頭を食いちぎってやろう」



ヴァイドラはそう言うと、口を大きく開く。



「た、助け……ゴホッ……」



分かってはいた。ドラゴン相手に自分が勝てるわけがないなど。


それでも、自分の両親を殺した相手に一矢報いたかった。


例えそれが、敵わぬ相手でも。




あぁ、自分は死ぬのだ。


母が目の前のドラゴンに食われた様に。





シュラが生を諦めた時だった。




「では、食って――ゴフゥ!!!?」




その時だった。


ドラゴンが何か強烈な衝撃を受けて、吹き飛んだのだ。




「なに……ごと?」



シュラは辺りを見渡すと、1人の少女の姿があった。




「すみません……遅れてしまいました、申し訳ないです」



そう、ドラゴンを一撃で吹き飛ばしたのは、エリシアだった。


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