翼人の都市
リッタの案内され、翌日には翼人の国がある、渓谷にたどり着いた。
二つの山の間の谷間に続く道を進んでいく。
両脇は何十メートルもある剥き出しの岩肌に囲まれており、エリシア達が歩くその間の広さは25メートル程あるだろうか。
それが進むたびに少しずつ広がっているのが分かる。
「そう言えば、リッタはあんな危険なところで何してたんですか?」
こんな小さな子供が、国を出てあんな危険な場所で何をやってたのだろうか。
「薬草集めてたの。森の中じゃないとない奴で……」
リッタはそう言い、腰にかけていた小さなカバンの中に詰まった薬草を見せてくる。
「あぁ、なるほど。でも貴方みたいな小さな子供がやる仕事なのですか?」
「でも大人の人達も人手足りなくて……ドラゴンに皆んな殺されちゃったから」
リッタの話に聞いている分だと、ドラゴンにより相当甚大な被害を受けているようだ。それこそ子供にこんな危険な仕事が回ってくるくらいには。
暫く道なりに進んでいると、道を塞ぐ様に作られた小高い石造り壁が見えてくる。
その壁の中央には、それに見合った大きな門があった。
「あの門の先が、私達の国だよ!」
リッタはそう言うと、翼をはためかせて宙へと上がる。
恐らく、空を飛べる翼人達にとって、地上にある門など大した障害ではない。恐らく、国境線としての役割やモンスターや他の勢力からの侵入を防ぐのが主目的だろう。
「今から門を開けて貰ってくる!」
リッタはそう言うと、門の先へと飛び行ってしまう。
それから、暫くして門がゆっくりと開閉していく。
「ごめん、少し時間かかっちゃた」
開閉する門の隙間から、ひょっこりとリッタが顔を出した。
エリシア達が門を潜ると、断崖絶壁の崖沿いに家が建ち並ぶ光景が目に映った。
崖沿いに建てられた家には、橋や階段で地上と繋がっている訳でなく、恐らく飛んで行くことを前提としているのだろう。
その様な光景の渓谷が奥まで続いていた。
「私達の国は、もうこの町一つしか残って居ないの」
「昔は他にも町があったのですか?」
「昔は同規模の町が他にも4つあったの。でも、ドラゴンの襲撃で、この町以外滅んで……」
その事を話すリッタの表情は暗かった。まぁ、無理も無いのだが。
リッタの話によると、この町には2000人程度の翼人が生活している様だ。それ以外にも生き残りのエルフが数十人いるとの事だ。
かつては、5つの町を含めて1万人近い翼人が居たらしいが、ドラゴンの影響でこの10年で2000人程までに個体数を減らされてしまったそうである。
「とりあえず、私たちの長にお姉ちゃん達と事伝えてくるね。それまで私の家で待っててよ」
「わかりました。そうさせてもらいます」
そうして、しばらく道のりに歩いて行くと、リッタの家が見えてきた。
「あれだよ」
岩肌の中腹に立てられていたリッタの家には、梯子の様なものがかけられていた。
飛行できる翼人にとって、梯子など要らない筈なのだがなぜあるのだろうか。
「へえー。梯子のおかげで大分入りやすそうだねぇ」
「我らにとって、梯子がなくても障害にはならないがな」
普通の人間には問題はあるだろうが、この3人ならジャンプするなり魔法を使うなりで難なく入れる筈だ。
ともかく、かなりの長旅だった。せっかくだしリッタの家で休ませて貰おう。
 




