追憶-3
覆滅の魔王を討伐して、暫く経った頃だ。
人類軍の最前線基地である、要塞都市クルグラにて。
勇者に各地で、魔王を討伐されていった魔王軍は、急進力を失い、それに伴い人類国家連合は、反撃に転じた。
クルグラは、魔族に支配されていた旧人類の領域作られ、ここから更なる進撃を続けている。
30万以上の兵士を常駐させる事ができる大要塞都市に、リーベス含む勇者一行は訪れていた。
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「ここでお別れだね、リーベス」
メリアはリーベスにそう言いかけ、言葉を続ける。
「ごめんねぇ……私のせいで、リーベスは……」
「気にしないで。ボクが好きでやった事だからね」
リーベスは、魔法を使えなくなる呪いを受けてしまった。
何度も解呪を試したが、この手の呪いは、呪った本人が解呪しなければいけないらしい。
だが、その呪いをかけた本人であるフレイアは、勇者ユウマにより殺されてしまった。
魔法が使えないリーベスは、何の役にも立たない。
この要塞都市から出ている馬車で人類領まで、帰る事になった。
そのあと幾度か乗り継いで、故郷の村まで帰る手筈だ。
もうミアやメリア、ユウマ達と、戦っていくのは無理がある。
「それに、ボクと弟で少し贅沢できるお金はあるからね」
リーベスはそう言い、片手に握られた麻袋に目を向ける。
この中には、袋いっぱいの金貨が詰まっていた。これは、今まで対魔族戦で助力していた事への報奨金だ。幾つもの国から支払われている。
と言っても、途中脱退との事で金額は少なめなのだが、それでも充分すぎる額だ。
「幸せに」
ミアはそう呟いた。
「まぁ、後のことは任せろ」
ユウマは、リーベスにそう言い放った。
「うん、後のことは皆んなに任せて、ボクはのんびりしてるね」
それから、リーベス達は暫くの間話し合った。
それなりに時間が経った頃、リーベスを乗せて帰る予定の馬車が到着する。
「それじゃあ、そろそろ行くね」
リーベスは、別れを告げて馬車へと乗り込んだ。
「絶対会いにいくからねぇ!」
そう言ってきたメリアに、手を振りながら馬車の扉を閉めた。
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馬車が走り出して、かなりの時間が経った。
辺りの景色は、平野から木々に囲まれた山道に移り変わった。
「大賢者様、あともう少しで後方の町に着きますよ」
そう声をかけてきたのは、剣を携えた護衛の男だった。
「ボクの事、そんな呼び方しなくても……もう魔法を使えないわけだし」
「いえ、貴方様は人類の為に戦い続けてくれた英雄です。その事実は変わりません」
リーベスもそこまではっきり言われてしまうと、否定のしようがなかった。
その時だった。
突然、馬車が止まった。
御者の「うっ」と言う短い断末魔が聞こえる。
そして突然、護衛の男の首が宙を舞った。
「なに……!?」
リーベスは突然の出来事に頭を上げる。
そこにいたのは、勇者その人―― シラサキユウマだった。




