リアの覚悟ー2
「久しぶり......なのかな、リア」
魔王フレイアはそう声をかけて来た。
「貴方様は、魔王フレイア様でしょうか?」
「そうだよ。私こそが魔王本人だよ。昔あった事があるはず、少しだけだけど......」
しかし、何故この魔王は直接自分に会いにきたのだろうか。それもわざわざ国外まで。
「なぜ、私程度の存在に会いに来られたのですか?」
「私は魔王を辞めるからかな?」
魔王を止める――つまりは生前退位という事なのだろうか。
「そして、次の魔王を決めるための選抜が始まる」
魔王を決める為には、其々の部族から一人、代表を選抜して最後に生き残った者を魔王とする――それがしきたりだ。
「そして、カルスティラ族の代表は君だよ。リア・カルスティラ」
その言葉にリアは、背筋が凍った。
「何故、私なのですか⁈ カルスティラで私より強い人なんて沢山います!」
正直リアは強くない。それなのに、何故自分が選抜されたのだろうか。普通は、部族内で最強の者を出すのがセオリーだ。
「理由は簡単だ。君が一番強いからだよ」
「そんなわけないじゃないですか⁈ 私より強い人なんっ……⁈」
フレイアはリアの額に掌を翳し、口を遮った。
「君の潜在能力は、魔族で五本指には入ってる筈だ。それを活かしきれてないだけだよ。でも、このままじゃ確実に死ぬけど……」
「それじゃあ、意味ないじゃないですか!」
自分の潜在能力が高いのは昔から知っていた。
しかし、それを発揮する事が出来なかった。才能はある、だがそれを扱えないのだ。
「だから、頼まれて私がきた。君の父親にね……友人の頼みだ、私は快く承諾してここにきた、て言うわけだよ」
「お父様に?」
「今から、潜在能力を最大限引き出す。そして君は王選に参加する……これは決定事項だよ」
逆らえない――魔族は魔王の固有スキルにより、魔王に対して、反逆の一切ができない様になっているのだ。
これから、自分は何百人相手に殺し合いをさせられる。そして、生き残れるのはたった一人。
生きて帰って来れば、またエリシアに会える。ならば、魔王の提案――もとい決定事項を受け入れる他ない。
「分かりました。王選に参加します。なので、私の潜在能力を引き出させてください」
「分かった。まぁ、それ以外に選択肢はなかったんだけどさ」
フレイアはそう言い、リアの額に触れようとする。
その時だった――
赤黒いの刀身の大剣が、フレイアの喉元を斬り落とそうと、振り下ろされる。
「おっと」
フレイアはそれを軽々しく回避する。
大剣を払った風圧で、テーブルの上に置かれていた幾つかの備品が床に落ちる。陶器が割れ、床に散乱する。
大剣を払ったのは、今まで話を黙って聞いていたアラストルだった。
「腹立たしいね。何をしに来たの思ったら、リアを誘拐しようだなんてねぇ……拒否権のないふざけた契約を持ちかけてね」
「アラストル。悪魔になっても他人を思いやる気持ちが残ってたのかな?」
「どうだろうねぇ? ボクは単純にエリシアの嫌がる事を、見過ごすつもりはないだけさ」
その発言を聞いた、フレイアは笑みを浮かべる。
「なんなのさ、だったら私と殺し合いしてみる?」
「もしかして、ボクに勝てるとおもってる?」
「悪魔風情に魔王が負ける訳ないじゃん」
その発言を聞いた、アラストルは分かりやすい不快そうな表情を浮かべる。
「ムカつくねぇ、だったら望み通り区別がつかないくらいにぐちゃぐちゃにしてあげる」
「こわいこわい」
フレイアの背後に、無数の魔法陣が出現する。
「私も死にたくないんでね、できる限り抵抗するよ。まぁ、逆に殺しちゃたら悪いけど」
「たかだか魔族が調子に乗ってさ……もう、死なすくらいじゃ赦さない」
アラストルはそう言うと、大剣を再び振り下ろそうとする。
2人かぶつかり合おうとしたその瞬間だったーー。
「まってください!」
2人の間に、リアが入り込んだ。
「……私、魔王の選抜に参加します」
リアはそう言い放った
 




