異世界でも居酒屋ご飯が食べたいんです
1話目を追加しました。
旧題でブックマーク、評価をしてくれた方本当にありがとうございます!!
震えるほど嬉しかったです。
「おーい!アオー!」
ギルドと酒場を繋ぐ扉を開けて、ギルフォードさんが私を呼びながら顔を出す。
厨房でお昼ご飯の仕込みをしていた私は、なんだなんだと、振り返る。
「オーク出たってよ!行くか?」
ギルフォードさんが親指でくいっと外を差し、ニカリと良い笑顔でそう言う。
私はその言葉に、思わずビカーっと満面の笑みになる。
「ひゃっほー!!いくいくーーー!」
モツ煮ネギ塩アミレバー!!!!
私は魔導コンロの魔力を消して、煮込んでいた鍋を調理台に移す。
ここはあと何時間かしたら、夜の酒場の仕込みにクラウディオさんが来てしまうのだ。間貸ししてもらっている私は、慌てて鍋をストレージに仕舞う。
もう一年近くもやっているのに、いまだに熱々の鍋を空間収納へ仕舞うことにためらいがある。
なぜこの熱々が、この空間の中で他の品に影響を及ぼさないのか不思議でならない。
「アルベルトさーん!私行ってくるねー!!」
ギルドに併設されている酒場兼宿屋の総責任者であるアルベルトさんに、私は扉に駆け出しながら声をかける。
素敵老執事のようなアルベルトさんは、今日も素敵すぎる笑顔で私に手を挙げて応えてくれる。
不在札を引っかけて、酒場をバーンと飛び出す。森に近い北門へと一目散だ。
レンガ敷きの大通りは、今の時間は人がまばらだ。旅行者や冒険者向けの店がひしめく通りを、私は軽快に走っていく。
緩やかに湾曲している通りの先に、背の高い外壁と門が見えてくる。
その手前にある解体所の扉を開けて、私は中を覗き込んだ。
「バルトークさーん!!」
奥の解体台に寄りかかる、スキンヘッドのガチムチにーさんが気だるげに手を挙げる。
「オーク来るよ!お願いしまーす!」
「おー。『ブタ』なー。」
私の口癖をまねしてニヤリと笑うその顔に、私もニヤッと笑って手を挙げる。
早くいかないと争奪戦が始まっちゃう。
ベーコン味噌漬けパンチェッタ
ローストワイン煮ソーセージ
「はぁー!醤油ほしー!!」
開け放たれた北門の向こうには、どこまでも青く草原が広がっている。
ベージュ色の道は遠く、広大な森まで続いていく。
遥か遠くで、剣を振り上げ合図を送る人影が見える。
私はそれに大きく手を振り、駆け出した。
これは、異世界に来ちゃった私の話。
私の過去と、未来の話だ。