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非日常奇譚/絞殺欲求・十二支編  作者: 柊木 渚
始まり始まり
9/36

【始まり始まり】08【

              ◆◆◆

 帰宅途中、丁度あの事件現場の公園に差し掛かった瞬間だった。

「良いですねえ父親と夕食ですか、随分と仲がよろしい事で」

 走行中に公園から今日よく聞いた声が聞こえてきた。

 急ブレーキをかけて恐る恐る声のした方向に顔を向けてみる。

「そんな青ざめた顔してどうしたんですか?大城君」

「霧縫・・・さん?」

 黒髪のポニーテールにツリ目、ボーイッシュな顔立ちで痩せ気味の体型に黒のワンピース。

 今日見た霧縫さんでありながら昨日見た人殺しの姿だった。

「こんにちは、大城君」

 声色を低くしているがこの声、名前を知っているという事は霧縫さんでありその手に持つ包丁で全てを察した。

 最悪だ!

 前傾姿勢をとり勢いよくペダルを急速回転させてその場を後にしようとするが彼女がそうさせてくれる訳もなく

「大城君ったら、話ぐらい聞いてくれてもいいじゃないですか」

 その言葉と同時に自転車の前輪に何かが刺さって勢いよく音を鳴らしながらパンクしてしまった。

「おぉ~何とも見事な事で!」

「一体何が・・・・・・?!」

 視線を落としてやっと気が付いた。自転車の前輪に刺さっていたのは小型スパイクで無理やり前進した事によりスパイクから外れたタイヤから勢いよく空気が漏れ出していたのだ。

「本当に馬鹿ですね大城君。こんくらい考えて動かないと探偵であるお父様と警官であるお母様にしめしがつきませんよまったく・・・・・・」

「何で父さん達の事を知っているんだよ・・・・・・」

 僕は一度も霧縫さんに父さん達の職業の事を言っていない筈だ。

 言ったとすれば自営業と言ったくらいで明言したわけではないのに・・・・・・

「少しは自分の頭で考えてみましょうよ、さっきお父様にあって身に染みたでしょう?」

 こめかみをポンポンと人差し指で叩きながら霧縫さんは言ってきた。

 ・・・・・・

「―――Fog社」

「お!面白い答えが出てきましたね、貴方がそれでいいならまあいいでしょう、そう私はFog社の取締役社長の一人娘、その地位を濫用して得た情報で貴方の両親の情報を取得したのでした」

 わざとらしく言葉に弾みをつけては僕を見下したような言葉でそう口にする。

「そんな事して良いと思ってんのかよ!」

 彼女の態度に苛立ちながらそう言うも

「良いわけないでしょ。そんな事したら重罪も良いところですよ。馬鹿なんですか大城君」

 何なんだよ此奴、さっきから言葉をころころ変えては一向になにか行動を起こす事をしない。

 そっちから切り出さないならこっちから言ってやる。

「昨日の人殺しはお前がやったのか」

「面白い事を口にしますね、一応はご名答です。そうです。この私がやったんですよこれでグサッとね」

「霧縫!」

 包丁を見せつけながら笑みを浮かべながらそう口にする彼女に対して苛立ちが収まらない僕は自転車を降りて彼女に駆け寄っていく。

 人を殺しておいてまだ罪の意識すらも浮べていない上にその事を楽しんでさえいる様子の彼女に苛立ってしょうがなかった。

 止められなかった己の被害者に対する罪悪感も含めてこのままではいけないと思い近づくも状況は先程よりも悪くなっただけでしかなかった。

「おっと、それ以上近づいていいのんですか?幼稚な頭でもこの不利的状況は明白でしょう」

 手に持っていた包丁を僕に向けて突き付けながら霧縫さんは微笑みながらそう言った。

 頭を冷やせばわかる事だった。彼女は刃物を手にしている。普通の女性なら力で圧倒できるかもしれないが彼女は快楽殺人を好む異常者である可能性があるんだ。いつ刺されたっておかしくない状況なのに自ら此処まで歩みを進めるなんて我ながら馬鹿としか言いようが無かった。

「・・・・・・僕も殺すのか?」

 近づいたのは僕だ。ここで殺されても文句なんて言えない、初めて背を向けずに前に進んで行動できた事件だってのに本当に馬鹿だよな・・・・・・

「殺すね・・・・・馬鹿な貴方に対してそれも良いでしょうが残念ながら結末は貴方の思うようにはいかないようです!」

 僕に向けた包丁は距離を詰めて僕の腹部へとずぶずぶと刺されていく・・・・・・いく・・・・・・いく?

 ん?痛く――ない?――

「ふふ、ふふふふ、ドッキリ大成功!」

 ん?!

「え?ドッキリ?」

 ・・・・・・本当に何なんだよいったい‼

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