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非日常奇譚/絞殺欲求・十二支編  作者: 柊木 渚
始まり始まり
8/36

【始まり始まり】07【

 差し出された日替わりランチを眺めてみる。

 主菜には金目鯛の煮付けで副菜に大根のべっこう煮が・・・・・・

 これは・・・・・・”完全なる和食だ”!

「うお!美味い!」

 なんだこれ?!今までに食べた事がない程に美味い!箸で割けばホロリとくずれ、口に含めば旨味の爆弾が爆発して美味しさに身震いするほどだ。

「はは!美味いだろ、言ったろ!外見で判断しちゃいけないって」

 嬉しそうに僕の方を見てそう言う父さんに少々ムカつきはしたが本当に旨いので今回はスルーする事に。

 僕も今度から外を見るのではなく内を見る事にしようと思うのだった。

 食べ進めながら父さんは話の続きを切り出した。

「さっきの話の続きなんだが、もしも霧縫 夜靄が事件(仮)の容疑者だとしたら昨日の事件(仮)を隠蔽することが可能かどうか俺なりに考えてみたんだが・・・・・・」

 定食を食べながら父さんはあっさりと僕の脳内に浮かぶ疑問を答えてしまった。

「可能だ。財力は言わば罪力ざいりょくにもなる。金があれば罪を掻き消すことが容易に出来る。そしてそこに地位をちょいと上乗せすればいくら人を殺しても許される史上最悪のチケットが与えられる訳だ。故に彼女、霧縫 夜靄は犯罪が可能であるし隠蔽も可能だ」

「いや許されるって・・・・・・」

「世間体から言えば許されないし極刑ものだ。だけどそれはただの世間体でしかない。別に見つからなきゃそれは効力を発さないんだよ。いじめは見つからなきゃいじめじゃないってのと同じ理屈だよ。この世は童話の様に優しくも無ければ厳しくもない、上に立つやつが成すがままにできる最悪の現実なんだからな・・・・・・」

「そっか、まあ、そうなるよな・・・・・・」

「なんだ驚かないんだな」 

 その答えが店に来た時の父さんとの会話で僕なりに薄々感づいていたから驚きはしなかった。

「事件(仮)の隠蔽の仕方はみーちゃんの言った仮説通りだろうな、それに公園に居たお爺さんはどうやらFogの子会社に借金があったらしくてな、チャラにする代わりに事件を隠蔽する協力をしてたとすれば気持ちが良いほどに辻褄が合うよな・・・・・・」

「そう考えるのが普通だよね・・・・・・なんか、ごめん・・・・・・」

 ここまで否定もなしにずっと僕の話に深く考えてくれる父さんに対して自分で考えようともせずあまつさえそうでなければと願ってしまう自分がいることに申し訳なく思ってしまう。

「謝るなよ、この事件は今までと違って不可解だがお前のこれからに関わって来る大事な事件になるかも知れない事件なんだ。これを機にできるだけ自分で問題を解決する能力をつけてみろ。だが言っておくが警察にはちゃんと通報するんだぞ!お前一人でどうこうするにも限界があるからな!解決を目指すならできるだけ人は多い方が良いしな。まあ気楽に、それでいて自分に向き合っていこうぜ我が子よ!」

 慰めと励ましのつもりなのだろうか父さんはそんな言葉を口にしてから僕の髪を大きな手でわしわしと乱暴に撫でてきた。

「うん・・・・・・ありがとう父さん」

「おうよ!」

 素直に零れたその言葉に父さんは笑いながらそう言ってそれからは二人して他愛のない談笑をしながら食事を進めた。

十九時五十分

 父さんとの食事を終えてから食事処を後にして事務所の前にて僕は自転車にまたがっていた。

「陽が落ちちまったな、気を付けて帰れよ」

「そっちこそ、頑張りすぎて倒れんなよ」

 別れ際の挨拶を言った後に僕はペダルを漕いで勢いよく自転車を奔らせていき父さんは事務所に帰って行った。

 こんな状況になったからか僕は生まれて初めて両親がこの人達で良かったと心から思いながら帰路に就いた。

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